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第354回 特許権や著作権の保護を受ける物の外観/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年3月22日_記事番号:T00108048

産業時事の法律講座

第354回 特許権や著作権の保護を受ける物の外観/台湾

 施文富は、「不等間隔で配置された8つの深い歯状波模様を有する複数の歯状波模様」という外観を特徴とする「靴底」の意匠についての特許を出願し、同特許取得(意匠登録番号D179735、2016年12月に公告)後に同靴底の製造を辰豫塑膠工業股份有限公司に委託しました。同社は鑫美公司や佳美企業社向けにも同様の靴底を製造しました。

 18年6月、施は鑫美および佳美が製造した革靴を市場で購入し、これらが辰豫などによる秘密保持契約違反に当たり、特許権および同靴底に係る施の著作権を侵害しているとして、損害賠償および判決主文の新聞広告掲載を求め、智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)に提訴しました。

平凡な設計は保護対象外

 訴えを受けた同裁判所は、21年8月に原告の訴えを棄却しました。施の控訴を受けた同裁判所第二審も、22年8月に次のような理由から控訴を棄却しました。

1.歯状の波模様と8つの深い歯状の波模様を不等間隔で配置した靴底の設計は、同業他社である茂泰公司の15年版の製品カタログに掲載されている。同カタログに掲載された製品と施の意匠の細部の違いは、既に多くの意匠特許に公開されている。

 このことから、施の靴底の意匠には進歩性がないことが証明される。

2.施の靴底のパターン設計は単調である。改良されたパターンと追加された折り目は、どちらも靴底の実用性を高めるためのものであり、芸術作品に求められる創造性のレベルには達していないため、著作権による保護を受けることはできない。

3.被告の靴底と施の外観設計は完全に同一なものではない。原告は、辰豫が靴底を作るために施の型を使用したことや、型の設計が流出したことを証明できていない。

 施の上告を受けた最高法院(最高裁判所)は、23年2月に上告を棄却、本件は確定しました。

 この事例は、優れた製品設計は、外観設計特許に加えて、著作権でも保護され得ることを示すものです。ただし、機能的なデザインであれば特許権を取得することはできますが、平凡な設計では、特許法や著作権法では保護されない可能性があります。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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