ニュース 法律 作成日:2023年2月22日_記事番号:T00107572
産業時事の法律講座顔淑美は宝来文創開発股份有限公司に在任していた2008年、蒸し器と小籠包のイメージデザインを設計し、同社と鼎泰豊(ディンタイフォン)の提携による鼎泰豊のお土産商品の開発・販売用に採用されました。
11年、顔淑美は鼎泰豊に移籍。15年、鼎泰豊は宝来との提携を解消しましたが、顔淑美が制作した蒸し器や小籠包の画像を加工し、「鼎泰豊月餅パイナップルケーキギフトボックス」「鼎泰豊子供用食器ギフトボックス」「鼎泰豊秋のパイナップルケーキギフトボックス」に使用しました。
これに対して宝来は、著作権侵害で300万台湾元(約1320万円)の損害賠償と新聞への謝罪広告の掲載を求めて提訴しました。
20年2月、智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)は、宝来の請求を棄却する判決を下しました。主な理由は、宝来は鼎泰豊が蒸し器と小籠包の美術著作を登録商標として登録していることを認識しながら、長い間一度も異議を唱えていなかったからというものです。
商標図案の改変は著作権侵害
宝来の控訴を受けた同裁判所第二審は、21年8月、次のような理由から、10万元の損害賠償を認めました。
1.美術著作である蒸し器と小籠包の「著作財産権」は宝来に帰属するが、「著作人格権」は従業員であった顔淑美に帰属する。
2.鼎泰豊は蒸し器と小籠包の美術著作を商標として登録しており、使用できるのは商標図案としてのみである。鼎泰豊は同商標図案を改変して製品にプリントしており、改変後の図案は宝来の著作権を侵害している。
3.鼎泰豊は、宝来が鼎泰豊による改変後の図案の使用に異議を唱えないであろうと考えていたため、「故意」の侵害ではなく、「過失」による侵害となるが、同様に損害賠償責任を負う。
宝来は、損害賠償額の低さに不満を持ち、最高法院(最高裁判所)に上告しました。22年12月、最高裁は次のような判決を下しました。
1.蒸し器と小籠包の美術著作の「著作人格権」は、顔淑美に帰属する。
2.第二審が下した「美術著作1点につき2万元」の損害賠償額の判断はずさんすぎる。
3.第二審による「判決が認定した金額は、新聞への謝罪広告掲載費用をはるかに下回るため、掲載の必要ない」との判断もまたずさんすぎる。
第二審の判決は、明らかに鼎泰豊側へ偏ったと見られます。最高裁はそんなことは全く意に介さなかったようです。
徐宏昇弁護士
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722