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第353回 修理業者による模倣部品の使用/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年3月8日_記事番号:T00107787

産業時事の法律講座

第353回 修理業者による模倣部品の使用/台湾

 楊岱儒は高雄市でアップル製品販売、修理ショップ「AppleBar加盟店」を経営し、必要な部品は黃貞煌より供給を受けていました。

 2018年4月、店内にアップルブランドのヘッドホン、ケーブル、電源アダプター、スマートフォンケース、タッチパネル、ケーブル部品の模倣品があったことにより、楊らは警察に摘発され、その後起訴されました。

 高雄地方法院(地方裁判所)は、黄が中古携帯電話メーカーからの購入証明を証拠として提出し、楊の店内の部品は自らが提供したと証言したため、21年1月、被告2人を無罪としました。

 また鑑定人も、「偽物かどうかを見分けるためには秘密の特徴を知らなければならず、一目見ただけでは偽物かどうかは判断できない。訓練を受けた専門家による綿密な観察が必要だ」と証言したため、被告には犯罪故意はなかったとされました。

修理業者なら判別可能

 一方、検察の控訴を受けた智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)は22年8月、鑑定人が押収品について次のような具体的な特徴があることを示したことから、それらを模倣品と認定、被告黃貞煌を有罪とする逆転判決を下しました。▽印刷や細工が正規品の水準ではない、▽QRコードが水平に印刷されておらず歪んでいる、▽アップルのロゴがギザギザのずさんなフォントで印刷されている、▽シリアルナンバーの印刷が粗く、ぼやけている──。

 さらに同裁判所は、黃被告は、同ブランド品の部品の販売に携わっており、模造品と正規品を区別することができたはずであることから、販売されている部品が模造品であることを認識していたと判断しました。

 黃はこの判決を不服として最高裁に上告しましたが、23年2月に次のような理由で同裁判所に棄却されました。▽上告人が中古機を取得した上で分解し、そこから部品や付属品を得ていたのだとしても、それがそのまま上告人が楊に販売した商品であることを証明するものではない、▽上告人は修理業を営んでいるのであるから、告訴人(アップル)製品の様式、品質、価格およびその出所を知らないはずはない──。

 修理業者が模倣部品を使用することはよく見られることですが、今回の事例は、違法な修理業者を抑止するのに十分なものでしょう。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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