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第351回 中国での営業秘密の侵害に対する重い罰/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年2月8日_記事番号:T00107301

産業時事の法律講座

第351回 中国での営業秘密の侵害に対する重い罰/台湾

 陳俊男は2002年に「良企機電顧問股份有限公司」を設立しました。10年に台中の「三久股份有限公司」に就職、12年に同社の上海子会社から離職する際、同社の太陽熱温水器に係る図面を大量にダウンロードし、良企公司で保管しました。また、陳は13年には中国・昆山に穀物乾燥機を製造する「蘇州喜気機械有限公司」を設立しました。

 一方、当時まだ三久公司に在任していた陳の元同僚の張智賢は、同社から関連設計図を盗み出しました。陳の姉の陳香文は同設計図のタイトル部分を修正液で白く塗りつぶした上でスキャンし、それらが良企機電の設計図であるかのようにタイトルを付け直した上で、三久公司のサプライヤーに対して見積もりを要求しました。

 三久公司はこれを発見。15年5月、良企公司と被告人の自宅の家宅捜索が行われました。検察官は同年中に公訴を提起しました。

不知でもスキャンは重罪

 台中地方法院(地方裁判所)は19年10月に次のような判決を下しました。

1.陳俊男は、中国で営業秘密を使用する目的で、それを違法に使用・開示したとして、懲役6年と300万台湾元(約1300万)の罰金を科す

2.張智賢も同罪で懲役4年6月を科す

3.陳香文も同罪で懲役2年を科す

4.良企公司は400万元の罰金を科す

 被告の控訴を受けた智慧財産及商業法院(知的財産および商業裁判所)は、22年8月に原判決を破棄し、次のような判決を下しました。

1.陳俊男は他人の電子計算機の電磁的記録を理由なく取得した罪により、懲役1年を科す。また、中国で営業秘密を使用する目的で、それを違法に使用・開示したとして、懲役4年と100万元の罰金を科す

2.張智賢は中国で営業秘密を使用する目的で、それを違法に使用・開示したとして、懲役1年6月を科す

3.陳香文は他人の著作物を無断で複製した罪で懲役8月を科す

4.良企公司は200万元の罰金を科す

 陳俊男と張について一審と異なる判決が出た原因は、二人が持ち出したファイルが、全て営業秘密というわけではなかったことにあります。陳香文については、彼女は自らが修正液で修正した書類が営業秘密であることを知らなかったためです。しかし、スキャンする行為は著作権侵害に当たります。

 また、本案に係る営業秘密は、中国での使用を目的としたものであったため、被告人らは重い判決を受けることとなりました。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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