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第36回 伝聞証拠──警察による取調べ調書


ニュース 法律 作成日:2008年12月24日_記事番号:T00012473

産業時事の法律講座

第36回 伝聞証拠──警察による取調べ調書

 
 「伝聞証拠(hearsay)」とは、いわゆる「また聞き」のことです。その最も典型的なものは、台湾でよく目にする「爆料(暴露報道)」です。伝聞証拠を犯罪の証拠として認定することは、また聞きによって罪を確定することに等しく、暴露報道のやり方と全く変わらないと言えます。そのため、法律で伝聞証拠を証拠として採用することが禁じられています。

 さまざまな伝聞証拠の中で、警察(調査局を含む)が被告以外に対して行った調書(談話記録、いわゆる「供述」)は、最も証拠としての価値が低いと言えますが、裁判所はたびたび犯罪認定の証拠として使用しています。

 警察で調査を受けているときは、どんな人でも緊張します。そんなとき、警察に「他人」の犯罪事実を説明するように言われれば、例え全く事実無根であったとしても、協力して早く帰宅させてもらおう、またはもう少し良い待遇を受けさせてもらおうということは、誰もが考えることでしょう。このようにして作成された「供述」に、証拠としての価値などあるはずがありません。

 供述には本来「関連情報」としての価値しかなく、警察はその後の調査によって得た証拠によって、その供述を裏付けまたは否定しなければなりません。証拠が調書の内容を裏付けているのであれば、調書を証拠とする必要はありません。民主法治国家は本来こうあるべきなのです。

供述が証拠にできる場合

 台湾の刑事訴訟法の規定によると、被告以外の供述は、当人が死亡したなどの理由で裁判所での公開審判に出廷して弁護士の質疑を受けることができない場合にのみ、証拠とすることができるとされています。検察官が伝聞を証拠として使用する際には、「信頼するに値する特別な状況があり、かつ犯罪を証明するのに必須である」ことを証明しなければなりません。裁判所はその証拠の「信頼性」「必要性」「合理性」すべてを検討した上で、それを採用するか決定します。

 伝聞証拠を犯罪認定の証拠とするかどうかの認定基準は、裁判所が決定するものですが、台湾最高裁判所は警察の取り調べ調書に関してかなり厳しく解釈しています。下級裁判所が供述を犯罪認定の主な証拠としている場合、最高裁判所は通常、その判決を取り消し、下級裁判所にさらなる説明を求めています。

 台湾の司法制度が民主に移行してから既に6、7年が経過しました。中でも最高裁判所が、供述によって判断が下された多くの判決を取り消していることは、司法改革に対する最大の貢献でしょう。
 
徐宏昇弁護士事務所
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