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第40回 商標の先行使用


ニュース 法律 作成日:2009年3月4日_記事番号:T00013761

産業時事の法律講座

第40回 商標の先行使用

 
 台湾では以前、外国の著名な商標が先行登録されてしまうことは日常茶飯事でした。最近はかなり改善されましたが、今も問題は続いています。

先行登録者が商品差し押さえ

 日本企業のアモロスは、「黒彩」というヘアカラースプレーを台湾に輸出し、智誠有限公司がこれを販売していました。

 一方で、佳慧科学工業有限公司という台湾企業は、それ以前からヘアカラースプレーの商標として智慧財産局に「黒彩」を登録していました。

 佳慧は2006年10月、裁判所から「証拠保全」の裁定を獲得し、智誠公司の1万3,000本のヘアカラースプレーを差し押さえました。さらに、裁判所に「智誠とアモロスに対し『黒彩』の商標を使用しないこと、市場に出回っている『黒彩』ヘアカラースプレーを回収・廃棄すること、および151万台湾元を損害賠償として支払うこと」という内容の訴えを起こしました。

 審理の結果、地方裁判所と高等裁判所はどちらも佳慧の訴えを却下しましたが、佳慧は最高裁判所に上告。結局、最高裁判所もこの訴えを却下し、08年12月31日に判決が確定しました。

「善意の先行使用」認められる

 判決の中で裁判所は繰り返し、「アモロスは佳慧の『黒彩』登録以前から、この商標を使用していた」と指摘しています。

 これについて商標法第30条第1項第3款は「後から商標登録の申請を行った者は、それより先に使用していた者による継続使用を禁止できない」と定めています。しかし佳慧は「この規定は93年12月に改正されたものであり、77年12月に登録された当社の商標には適用されない」と主張しました。

 しかし、最高裁判所は「前述の商標法の規定は93年12月以前に登録された商標に対しても適用される」とし、「他者より先に『善意』により使用されている商標は、それより後に登録された商標の拘束を受けない」との判断を下しました。

賠償請求には不法行為の証明が必要

 この最高裁判所の見解は賞賛に値するものですが、智誠はこの判決が確定するまでの間2年にわたり、約1万本ものヘアカラースプレーを差し押さえられていたのです。

 しかしながら、智誠が被った損害については、故意または重大な過失により佳慧が不法行為を行ったことを証明しなければ、賠償はされません。


徐宏昇弁護士事務所
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