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第43回  著作権法の「三振即アウト」条項


ニュース 法律 作成日:2009年4月15日_記事番号:T00014727

産業時事の法律講座

第43回  著作権法の「三振即アウト」条項

 
 現行の著作権法に、いわゆる「三振即アウト条項」を増設することを盛り込んだ著作権法改正法案が4月8日、立法院の初審を通過しました。これはインターネットサービスプロバイダー(ISP)が、インターネットユーザーによる著作権を侵害する不法行為関与を3回見つけた場合、ユーザーに対してサービスの提供を停止することができるというものです。

ISPの逃げ場?

 しかし、改正法案をよく見ると、その目的はISPの「避難所(逃げ場)」を作ることだと感じられます。それは、ISPが現在行っている著作権保護の措置に対して「裏書」を行っているといえるからです。

 また、この改正法案で恩恵を受けるのは主に、コンピューターソフトやデジタルコンテンツを提供する大企業などの著作権保有者といえます。

 実務上で、ISPがユーザーに対して、「三振即アウト」制同様の措置を適用するのに立法は必要ありません。ISPとユーザー間の契約で事足ります。現在残されている課題は、ISPとユーザー間の契約期間が終了した際に、ユーザーはどのように訴えを起こせばいいのか、どのように問題を解決すればいいのかという点だけです。

 つまり、立法技術からいえば、これらの課題さえクリアーできれば、ISPが現在用いている方法で、法律上特に問題はなく、著作権者に対する保護もほぼ完全だといえます。

 ただISPおよび著作権者である大企業は、現状のままでいいと考えず、立法院に「避難所」条項を通過させるよう働き掛け、自分たちの権利をしっかり保障させたようです。

ユーザーの不満は裁判所で

 改正法案では、ISPはインターネット上の不法行為に対し全く責任を負わなくてもよいことになっているといえます。というのは、ISPは、著作権保有者からネット上の不法行為の指摘を受けた際、不法行為に関与している内容部分を削除すればそれでよく、その指摘が正当なものかどうかを判断する必要はありません。 

 またISPは、ユーザーに対する責任がありません。ユーザーは不満がある場合、著作権者と裁判所で法的に争わなければなりません。ユーザーがISPの措置に納得できない場合も同様です。

 以上から、この法案は、ISPと著作権者を保護するだけのものといえそうです。ユーザー側にはISP同様の便宜が図られていないからです。

 もし今後、裁判所で本件にかかわるケースが扱われることになれば、裁判所は厳格な態度で法案の有効性を審査するでしょう。しかし実際には、ユーザーは、経済上の重大な不利益が生じたわけでなければ、(たとえば不合理な対応を受けたくらいでは)お金をかけてまでISPまたは著作権者を訴えたりはしないでしょう。


徐宏昇弁護士事務所
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