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第47回 請負人は請負契約を終了できない


ニュース 法律 作成日:2009年6月10日_記事番号:T00015848

産業時事の法律講座

第47回 請負人は請負契約を終了できない

 
 台湾での公共工事に関する主要な契約は「請負契約」と「購買契約」です。大部分の公共工事契約は「請負契約」で、請負人が一定の作業を完成させた後に、発注者(政府購買部門)より報酬を受け取ります。

 経験者であればご存知かもしれませんが、台湾の公共工事が期限内に完成することはまれです。多くの工事は大きく遅れ、市民は効率の悪い工事に耐えなければならず、請負人はそれ以上の苦労を強いられます。

 公共工事が期限内に完成しない理由には、請負人の財力・能力不足のほか、比較的よくあるのが、政府の調達部門が土地の取得が困難などの理由で施工環境を提供できない、もしくは政府の調達部門またはコンサルティング会社の調整能力が欠如しているため作業工程が混乱し、結果、請負人同士が互いに衝突して工事が遅れるというものです。この種の現象は民間の工事でもたまに見られます。

 作業工程の遅れは、請負人のコストを時間とともに増大させます。また工程の遅延により、本来の設計が環境に合わなくなり、設計変更を余儀なくされ、請負人の損失となることもあります。

 通常、請負人は発注者が合理的な損失補償を行うことで施工の継続を望みます。請負人がこのような要求を行うのは、公共工事は通常、進度に応じて報酬が支払われるためです。工事が遅延すると、請負人は計画通り報酬を受け取れないため、資金繰りが厳しくなりますが、関連費用は支出し続けなければなりません。

 しかし、発注者が政府機関である場合、報酬受け取りの手続変更は困難です。さらに通常、担当者は保身のために賠償を拒みます。そのため、請負人は損害を拡大させないよう、支出ばかりで収穫の無い関係をどうにかして終了させなければなりません。

利益のない工事も継続せざるを得ない
 
 民法の規定では、請負工事の完成に発注者の協力が不可欠な場合で、発注者がその協力を怠ったために工事が進行しない際には、請負人は発注者に対して一定期限内に請負人が継続して施工を行えるよう改善を催促できます。しかし、発注者が改善を行わない場合、請負人は「契約解除」(双方の関係を契約締結以前の状態に戻す)は行えますが、「契約終了」(双方は請負人が既に完成した工事に対して決算を行う)はできません。

 この民法規定の理由は、請負契約は請負人が作業を完成させることを要求しているからです。請負人は材料を提供するだけではなく、その専門性をもって工事を完成させなければなりません。請負人が双方の関係の終了を選択すれば工事は完成しません。

 請負人が既に完成している部分を発注者に受け渡したところで、発注者には何の価値も無い可能性があります。そのため、請負人には「契約終了」し、発注者に既に完成している部分を受け取らせる権利は無いのです。

「契約解除」なら報酬なし
 
 このような規定の下、請負人は工事が遅延した際、無理をしてでも工事を完成させるか、一時的に退去し、時期を見計らって工事を継続するか、あるいは工事を中止するかを、利益を考慮した上で慎重に選択しなければなりまん。なぜなら、もし「中止」を選択した場合、法に基づき「契約終了」ではなく「解除契約」しか行えないため、請負人は発注者に対して損失の賠償しか行えず、完成している部分の報酬を請求することができないからです。
 
徐宏昇弁護士事務所
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