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第52回 公共工事 —工事費からコミッション控除も


ニュース 法律 作成日:2009年8月19日_記事番号:T00017333

産業時事の法律講座

第52回 公共工事 —工事費からコミッション控除も

 
 台湾では公共工事の受注をめぐり、役人や議員がコミッションやリベートを受け取ることが当たり前と思われています。法律ではもちろん禁止されており、刑罰や工事費から控除といった規定が設けられています。それでも多くの人々が、公共工事を受注するには政府との関係づくりや、有力関係者の口添えが大切だと考えているのが現状です。

市役所職員が起訴されたケース

 花蓮市役所は2007年11月、多機能運動公園の建設工事を建設会社の豊年営造に1,000万台湾元で発注しました。同社は同年12月に工事を完成させ、花蓮市役所に対して工事の後金345万5,000元を請求しました。その際、花蓮市役所が後金のうち、総工費の約25%に当たる245万5,000元分の支払いを拒んだため、市役所と立法委員が手を組んでの汚職が発覚し、市役所の職員が起訴されました。

 同社の責任者は司法当局に対し、入札募集の前に人を介して花蓮市役所と協定を結んでいたことを認めました。協定後、同社は市役所に見積書を送付し、市役所はそれに記載されていた入札予定額が予算を大きく上回っているとして、数値を引き下げた後に市役所と立法委員のコミッション25%を加算した上で同社に提示しました。同社はこの額で入札し、落札したといいます。

工事費の支払い拒否

 一審の花蓮地方裁判所は、市役所側に勝訴判決を下しました。

 これを不服として同社が控訴した二審では、花蓮高等裁判所が一審判決を破棄し、市役所に対して後金全額の支払いを命じました。その理由は、「政府調達法によると、業者が他者にコミッションを支払って落札した場合、発注を行った政府機関は該当する不当利益を工事費から控除できる。しかし本案で花蓮市役所は、25%の不当利益を証明できていないため、控除できない」というものでした。

 その後、花蓮市役所は最高裁判所に上告しました。最高裁判所は09年7月9日、工事費を予算どおりに計算した後に25%のコミッションを上乗せしているにもかかわらず、それを不当な利益と認めないのは問題だとして、高等裁判所に差し戻しました。

 この案件で、公共工事の受注をめぐりコミッションの支払いがあったと判明した場合に、発注を行った政府機関は当該金額を工事費から控除できる点が明らかになりました。それだけでなく、高等裁判所の判決に問題がある可能性も明るみに出る結果となりました。


徐宏昇弁護士事務所
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