ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第54回  労働規則違反の「情状重大」


ニュース 法律 作成日:2009年9月16日_記事番号:T00017940

産業時事の法律講座

第54回  労働規則違反の「情状重大」

 
 台湾のある大手石油会社が2006年1月25日、従業員2人に対し、「03年11月の納品検査の際、詳細な検査を規定通り行わず、防火材料が用いられていない設備の納品を認めたため、会社に損害を与えた。よって、労働契約を終了する」と通知しました。

 この従業員2人は、「会社は03年時点で既に、納品される設備に防火材料が使用されていないことを知っていた。にもかかわらず2年後になって突然解雇するのは違法だ」として、会社に対して賃金の支払いを求める訴訟を起こしました。

 第一審は、原告の主張を一部認めて原告勝訴としました。被告はそれを不服とし控訴、控訴審は原判決を破棄し、従業員らの訴えを退けました。  従業員らは二審判決を不服として、最高裁判所に上告。被告は、原告の納品検査が正確に行われておらず、労働規則の重大な違反に当たり「情状が重大」だと主張しました。

 最高裁判所は、原告の労働規則違反を認めながらも、「情状が重大」とまでは認められないため、被告による解雇は不法であるとし、高等裁判所の判決を破棄しました。

雇用関係の継続が困難

 最高裁判所によると、いわゆる「情状が重大」とは、当該事由が労働関係の継続に影響を及ぼすもののため、雇用主に対して即時に労働契約を終了する権利を与える必要が生じ、また労働者は解雇された後、雇用主による退職手当の支払いが期待できない状況を指します。

 つまり、労働者が労働契約または労働規則の具体的約定に違反したため、雇用主は解雇以外の客観的な懲罰手段を用いた雇用関係継続が困難で、さらに雇用主の懲戒解雇と労働者の規則違反の間に、一定以上の妥当性が存在することが必要です。

 この判決から、従業員の労働規則違反が「情状が重大」と判断されるには、以下の基準を満たさなければならないと分かります。

1)労働規則違反が、社会通念上、雇用主がそれを容認し、雇用を継続できる範囲を超えている

2)従業員は、雇用主による懲戒解雇に加え、退職手当も支払われる可能性がない

3)雇用主の解雇は、従業員の労働規則違反の事実と比べ、処分として重過ぎない


 これらのことから、雇用主による従業員解雇に対し、台湾の裁判所はとても厳しい基準を持っていることが分かります。

 従業員による労働契約または労働規則の重大な違反に気付き、該当者を解雇したい場合には、訴訟ざたとなったものの証明がないために従業員に賃金を賠償しなければならない、などということにならないよう、まず十分な証拠収集を行うことをお勧めします。


徐宏昇弁護士事務所
TEL:02-2393-5620 FAX : 02-2321-3280
MAIL:hubert@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座