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第57回 訴訟費用の担保


ニュース 法律 作成日:2009年10月28日_記事番号:T00018835

産業時事の法律講座

第57回 訴訟費用の担保

 
 外国人が台湾で訴訟を行う際に最も面倒な問題は、被告が原告に対して訴訟費用の担保を求めることでしょう。

 台湾の法規定では、民事訴訟を起こす場合、原告は先に訴訟費用を納め、勝訴した後に被告にそれを請求するとことになっています。もし原告が外国人または外国企業で、台湾で登録を行っておらず、資産も無い場合、提訴時に訴訟費用を納めるのみならず、上訴する場合でも訴訟費用を納める能力があることを保証するため担保を提供しなければなりません。この規定は裁判所が訴訟費用を受け取るためのもので、被告とは基本的に関係ありませんが、被告がこの規定を利用して原告の訴訟を妨げることが少なくありません。

 台湾は貿易が盛んなため国際間の民事紛争も数多く発生していますが、この制度は外国企業が民事訴訟を起こす際に、多くの頭の痛い問題を引き起こしています。

 民事訴訟法は、外国人または外国企業が「訴訟費用を支払うための十分な資産を有している」場合、担保を提供しなくてもよいと規定しています。問題は、どのような資産が訴訟費用を支払えることの証明となり得、支払いをできるかの認定について、裁判所の判断に相当の幅が存在することです。

 実際、外国企業は通常、台湾に資産などは持っておらず、あるとしても台湾で登録している商標や、申請を行った特許などです。これらの権利は知的財産権と呼ばれていますが、財産権である以上売買可能で、現金化できます。このため、訴訟の対象価額が大きくない案件では、裁判所はそれをもって訴訟費用の支払いが可能な資産と見なす可能性があります。

債権で担保免除、一歩進んだ判断

 先日、最高裁判所はある特許ライセンスに関する訴訟案件で、外国企業が台湾で持っている「債権」によって、訴訟費用の担保を免除する根拠とするという従来から一歩進んだ判断を示しました。同案件で原告は、台湾の著名な上場企業と数年にわたる特許ライセンス契約を締結しており、毎年高額の権利金収入を得ていることを証明しました。知的財産裁判所の審査によると、当該訴訟案件の三審の訴訟費用はわずか80万台湾元であるため、原告の特許ライセンスに関する債権は、被告が支払わなければならないであろう訴訟費用を賄えると判断。これにより、被告が求めていた訴訟費用の担保請求を棄却しました。

 被告はこれを不服として上告しましたが、最高裁判所は知的財産裁判所の見解を支持し、上告を棄却しました。

 もちろん、この判決によって、外国企業は台湾に債権を持っていさえすれば、訴訟費用の担保を提供する義務を一律免れられると証明された訳ではありません。この案件において、原告が担保の提供を免れたのは、主に特許ライセンス年数が長く、原告の債務者に相当の財力があったことが要因です。すなわち、その他の債権であっても、これらの要件に合致すれば、担保提供を免除される理由と判断されると考えられます。


徐宏昇弁護士事務所
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