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第55回 入札談合


ニュース 法律 作成日:2009年9月30日_記事番号:T00018235

産業時事の法律講座

第55回 入札談合

 
 台湾の政府調達法に、公開競争入札は応札が3社以上なければ、原則として入札が成立しないとする規定があります。ただ、政府調達案の多くは、業者3社以上が応札するほど魅力的ではありません。そこで、スピーディーに落札したいと考える業者の中には、入札不成立で再入札とならないよう、同業者に「偽入札」を持ちかけて3社以上の応札業者をあらかじめ確保するケースもあります。

 しかしこの方法は、政府調達法第87条第3項の「詐欺、またはその他の違法な方法で、公開入札に不当な結果を生じさせる」という規定に抵触し、5年以上の懲役に処される可能性があります。

偽入札の判例

 高雄県岡山鎮公所は2003年12月、海能社に企画させた「岡山鎮管轄内の監視システム設置に関する調達案」の公開入札を行いました。その際に、海能は同社責任者が親せきと共に設立した「富宏」「皇普」「琨盟」の3社を入札に参加させました。うち「皇普」「琨盟」の2社には、故意に必要書類が不足した状態で提出させました。これら3社と別の応札業者は、岡山鎮公所に「製品の規格が合わない」と判断されました。その結果、「富宏」が2,250万台湾元で落札を果たしました。

 その後、司法当局の調査で、同社責任者と親せきの2人が起訴されました。高雄地方裁判所は2人に有罪判決を下し、求刑1年に対し、懲役6カ月の判決を下しました。被告は控訴、上告しましたが、台湾高等裁判所、最高裁判所ともに、地裁の判決を支持しました。

 各裁判所が有罪と判断したのは、被告が応札を求めた2社が必要書類の一部を故意に提出しなかった点、および被告が当該企画の顧問会社の責任者である点からです。

「付き合い入札」の妥当性

 台湾で一般に広く行われている、入札する意思がない業者に「付き合い入札」させ、応札企業を3社以上にすることが、果たして本当に違法なのかどうかは、検討に値する問題です。

 もしほかに3社以上が応札した場合、いわゆる「付き合い入札」した業者は落札結果に影響を与えていません。また、ほかに3社以上が応札しなかった場合は、「付き合い入札」が政府のコスト削減に役立ったとも、誤った結果を招いたと言えるでしょう。これは、2回目以降の再入札で、3社以上が応札するか誰にも予測できないからです。

政府調達の現状

 本件に関する最大の問題は、入札を企画した業者自らが応札し、落札したことです。これこそが、各裁判所が被告らに刑事罰を科した主な理由です。

 ただ、最高裁判所は被告の行為を「他者(鎮公所の担当者)に誤解を与え、正確で適切な決定をできないようにした」としています。しかし、被告が自ら企画した入札案に応札するという、明らかに問題がある行為について、鎮役所は本当に何も知らなかったのでしょうか。

 賢明な読者の皆さんは本件から、台湾の「政府調達文化」の一端をうかがい知ることができると思います。


徐宏昇弁護士事務所
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