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第48回 商標侵害の成立用件


ニュース 法律 作成日:2009年6月24日_記事番号:T00016163

産業時事の法律講座

第48回 商標侵害の成立用件

 
 商標侵害が企業に与える影響は計り知れません。自分で考えた商標が市場に出た直後にそっくりな商標が出回ったり、自分で考えた商標であるにもかかわらず、他業者から商標侵害で訴えられたりすることさえあります。このような事態が起きれば、企業は問題解決のために生産や事務に費やすべき貴重な時間を割かなくてはならなくなります。
 
 企業が他者から商標を侵害したと訴えられた場合、係争対象となった商標を使用し続けるためには、「商標を侵害していない」ことを主張しなければなりません。一方、商標が他者に侵害された場合、侵害者に商標の使用を停止させるためには、「商標を侵害された」と主張しなければなりません。そして、商標侵害に当たるかどうかの判断は、この両極端な主張の「間」でなされるのです。
 
 台湾の裁判所は従来、双方の商標が似ていて、かつ商品も似ていれば、商標の侵害が成立すると判断していました。経済部知的財産局は、この判断のあり方に従って商標近似の認定原則と商品近似の認定原則を制定。今度は裁判所がこれら明文化された原則をそのまま判断基準に採用して、判決を下すということが続いていました。
 
機械的判断に変化が
 
 しかし、最近はこうした状況に変化がもたらされています。最高裁判所と最高行政裁判所は最新の見解で、商標侵害の判断は機械的に行われるべきではなく、さまざまな商品・サービスの特性を考慮して個別に行わなければならないと指摘。商標侵害に当たるかどうかの判断で最も重要な原則は、「消費者に混同を起こさせる恐れがあるかどうか」となりました。すなわち以下の4点となります。
 
1)商標侵害の判断基準は、関連商品・サービスの性質によって異なり、識別性の高低(創作性の高い商標なのか、一般の説明のための文字なのか、または誰もが知っている著名な商標なのかなど)が区別される
 
2)混同の恐れがあるかどうかの認定基準は、関連商品・サービスを購入する消費者の知識と判断力を基に決定される
 
3)混同とは、消費者が特定の商標を見た際に、その商品が別の商標権者が生産や販売に当たったり、または原料を供給した商品と誤認したりすることや、別の会社を関連企業や加盟店、フランチャイズ、その他特別な関係にあると誤認を起こすことをいう
 
4)侵害を受けたという主張の対象になっている商標の識別性の高低も判断に影響する基準となる
 
 最高裁判所と最高行政裁判所は下級裁判所が判断を行う際に、以上4点の要素の分析を行い総合的な判断を下すこと、および判決理由を判決中に詳しく記載することを求めています。
 
認定基準の不一致も
 
 商標侵害をめぐるこうした変化は、司法当局の判断が社会一般の認識に沿ったものになってきたことを示しています。しかし、これらの判断基準はいずれも主観によって左右されるものであるため、当面、各裁判所で認定基準の不一致という問題が起きることでしょう。
 
 その場合、商標をめぐるあらゆる民事、刑事、行政訴訟が知的財産裁判所で審理され、共通認識が短い時間で得られれば解決もあり得るため、そうした展開を期待したいところです。
 
徐宏昇弁護士事務所
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