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第44回 台湾における特許保護の進展


ニュース 法律 作成日:2009年4月29日_記事番号:T00015034

産業時事の法律講座

第44回 台湾における特許保護の進展

 
今年から特許審査が高速化
 
 経済部知的財産局は2009年1月1日より、「発明特許加速審査作業」を実施しています。これは、台湾で特許を申請し実質審査段階に入った段階で、外国において同様の申請案が既に許可を得ている場合、申請人が外国の特許管理局の裁定書、および許可を得た特許請求の範囲を知的財産局に提出することで、6カ月以内に裁定を受けられるというものです。

 知的財産局は、申請者が外国での審査許可裁定書を提出すれば必ず許可を出すとはしていませんが、申請者が最も有利な裁定結果を知的財産局に提供することを考慮すれば、許可が速やかに下される確率は高いでしょう。これは台湾の「特許審査高速道路(patent prosecution highway)」とも言えるものです。

知的財産裁も独自の存在感
 
 特許審査高速道路の設立で特許の取得が高速スピードアップしたことは、特許権利申請者にとっては福音ですが、これに加え08年7月1日より運営を開始した知的財産裁判所の最近の判断傾向も、もう一つの恩恵と言えるでしょう。

 知的財産裁判所は運営を始めてまだ1年も経過していませんが、既にその独自の存在意義を示し始めています。特許侵害案件に関する審判上の特徴としては:

1. 速度の向上:
 
 過去、普通裁判所では数年を要した一審判決が、知的財産裁判所では数カ月で下る。理由として、現段階で審理中の案件が多くないこと、また一審は単独審であるため3人の裁判官の討論が必要ないことなどがある。

2. 特許権利者保護の傾向:
 
 現在までの一審判決では、特許の有効性は、特許の「新規性」に明らかな瑕疵(かし)がある場合を除き、特許の有効性を維持する傾向があり、特許の無効を宣告してはいない。侵害に関しては、被告の製品と原告の特許請求の範囲の記載が一致していれば侵害を認定している。

 もちろん、知的財産裁判所の一審判決は控訴が可能で、その場合3人の裁判官でより厳格な審理が行われます。最高裁に上訴することもできます。一審判決が厳格でなかった場合、最後まで同じ判断は維持されないかもしれませんが、被告からすれば商業上の機会を失うことになる可能性が強まり、特許権者からすれば一審で勝訴すれば威嚇効果は十分です。従って、知的財産裁判所の現在の方針は特許権利者にとっては相当有利なものとなっています。

「特許キラー」知的財産裁
 
 知的財産裁判所の設置により、上記のような効果を容易に得られるようになりました。もし知的財産裁判所が一審において特許の有効性と侵害の認定を正確に審査したとすれば、過去に知的財産局が行ってきた特許審査基準で認められた特許の多くが無効を宣告され、大部分の案件で特許侵害を防げることになるでしょう。そうなれば今後知的財産裁判所は、「特許キラー」というべき役割を果たすことになると考えられます。

 以上のようなことからすると、これからは特許権者が特許権を主張する良い機会となるでしょう。そのためかどうか定かではありませんが、最近、知的財産局の特許審査が確実かつ慎重になってきている傾向が見受けられます。
 
徐宏昇弁護士事務所
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