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第42回 訴訟における弁護士の役割


ニュース 法律 作成日:2009年4月1日_記事番号:T00014415

産業時事の法律講座

第42回 訴訟における弁護士の役割

 
 日本の地下鉄には、「国会議事堂前」や「明治神宮前」のように、外国人にとっては不思議に感じる駅名があります。なぜかというと、これらの駅は建築物などの「地下」にあるのに、「前」という名称がついているからです。外国人にこの理由を理解させるためには、一定の説明が必要でしょう。

 訴訟も同様です。当事者が「誰もが知っていて当たり前」だと思っていることが、裁判官にとっては「おかしなこと」である場合があります。そこで、状況に詳しい人間が、法律用語を使って説明し、当事者の立場を裁判官に理解してもらわなければなりません。  当事者は「被害を受けた」と思っているので、裁判官がどうして自分の主張を理解せず、信用しないのかが分からないものです。

 筆者も最近、ある公共工事の調停で、こうした場面に遭遇しました。

裁判所に当事者感覚を伝える

 台湾政府のあるプロジェクトで、発注者である政府は工事の管理能力が非常に低く、工事を請け負った業者はスケジュールの遅延や現場の混乱など、大きな苦労を強いられていました。一方、政府の報道に対するガードは徹底していたため、外部にはそのことが全く知られていませんでした。

 もし請負業者の主張を弁護士がそのまま調停委員会に伝えたならば、不合理な要求をしてくると調停委員会に受け取られてしまったかもしれません。

 しかし、筆者が工事現場の写真を添付して報告したところ、調停委員会は請負業者がなぜ工事を停止して損害賠償を請求する意向なのかすぐに理解し、スムーズに話し合いに入ることができました。

 当事者である請負業者は、毎日廃墟のような作業現場にこもって工事をしていたため、外部の人がその現状を知らないとは考えもしなかったのです。

 このような案件における弁護士の役割は、業界の慣例や特殊性など、一般に知られていない事実を見つけ出し、その点を裁判所に理解させ、裁判所が下す判断を当事者の認識に近付けることです。

 つまり、問題が起こった際に、当事者の盲点を探し出し、必要な情報を裁判所に伝えて訴訟を有利に進めること──、これが弁護士の重要な役割の一つなのです。


徐宏昇弁護士事務所
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