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第38回 煙害防制法は有効か?


ニュース 法律 作成日:2009年2月4日_記事番号:T00013127

産業時事の法律講座

第38回 煙害防制法は有効か?

 
 春節(旧正月)前に大きな話題を呼んだ出来事として、「不景気」と「消費券」に加え「煙害防制法(たばこによる被害防止法)新規定の施行」が挙げられます。

解釈に議論の余地も

 1年半の準備期間を経て施行されたこの煙害防制法新規定に関して、特に注目されているのは「3人以上で共用する室内作業場」での喫煙を禁止していることです。メディアの報道によると「室内作業場」とは、「部屋」そのものを指すわけではなく、「事務所」または「工場」を指すということです。

 つまり、1人で使用している部屋であっても、ほかの部屋と空間的につながっていれば喫煙はできないこととなります。これに反して喫煙すれば、最高で1万台湾元(約2万7,000円)の罰金が科されることになります。

 このような解釈が法の目的に沿っているのか、または「比例原則(法律の執行手段は目的と比例したものでなくてはならないという原則)」に合致しているかの認定は、行政裁判所がその役割を負うでしょう。しかし、もしこの規定が厳格に施行されれば、多くの問題を生むことは間違いありません。

 法律が、道徳または宗教と最も異なる点は、法律には強制力があることでしょう。つまり強制力のない法律はただの「文言」で、その効果は「執政者の理想の標榜」、「法律の威信に対する挑戦」でしかありません。

施行には困難が伴う

 確かに煙害防制法は高い理想を掲げているのですが、その理想を達成するための「方法」は、「他人にたばこを吸われることを嫌う人」を含む社会一般の共通認識であるとは限りません。

 また、前述の「3人以上で共用する室内作業場」のように、執行の際に認定が難しい問題があり、またその検証も難しく、関連機関は相当の人力と予算を投入しなければならないでしょう。

 さらに罰金が高額なため、それに伴う行政救済が提起されることは間違いないでしょう。つまり煙害防制法は、立法技術的には施行が難しい法律なのです。

「禁煙」表示は遵守が得策

 しかし、それでも同法のすべてが施行困難というわけではありません。例えば、第15条の規定、「禁煙場所はその出入り口に禁煙であることの標示を掲げなければならない。違反者は1万元以上の罰金を連続して科すことができる」です。

 会社、工場などすべての禁煙場所入り口に、禁煙であることを示させることは認定上も難しくはなく、取り締まりも写真による証明ですむため、比較的簡単でしょう。

 したがって、この同法新規定の施行で最も可能性が高いのは、禁煙標示を実行しないために罰せられることですから、この点には注意が必要です。


徐宏昇弁護士事務所
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