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第45回 台湾相続法の大変革


ニュース 法律 作成日:2009年5月13日_記事番号:T00015304

産業時事の法律講座

第45回 台湾相続法の大変革

 
 台湾で民法が施行されて以来、相続法の原則は「親の借金は子が返す」というものでした。債務者が死亡した後、債権者は相続人に対して、相続した財産に相続人の財産を加え債務を返済するよう要求できました。もし相続人が相続財産の範囲内で債務を相続したい場合は、裁判所に対して3カ月以内に「限定継承」を申請すればこれが可能でした。

 この制度は数十年間施行されてきましたが、社会から大きな批判を受けていました。

「限定継承」が相続の原則に

 2007年12月14日、立法院で相続法改正案が成立し、相続人が「行為無能力者」または「限制行為能力者」(つまり未成年)である場合、裁判所に申請を行うことなく「限定継承」となるとされました。

 しかし近日、法務部はこの改正が「画龍点睛を欠く」と判断し、特別に「民法継承篇部分条文修正案」を制定し、相続法を原則、「限定継承」とすることに改めることを決定しました。この改正案について法務部は一般市民にヒアリングを行って社会の意見を求め、大多数の立法委員にも支持を受けまています。

 法務部の改正案によると今後、相続は原則、相続人が相続した財産の範囲内でのみ債権者に対して返済の責任を負い、裁判所に対して申請を行わなくてもよくなります。

 従来、「限定継承」は裁判所の同意が必要で、その際の裁判所は、遺産の計算や返済処理などを行っていました。将来、この改正案が成立した後も、関係当事者は裁判所に対してこの種の業務提供を要求することができます。

 しかし、「限定継承」に裁判所の許可が必要ではなくなり、多数の案件に裁判所の処理が必要なくなることを考えると、改正案は将来民間の専門家が相続処理を行うことを示唆しています。

 ただ、改正案では相続に関する処理の報酬を、相続財産の中から得られるかどうかは規定していません。つまり、相続財産で相続財務を返済できないという多くの案件では、その処理を委託された民間の処理者(弁護士など)に不利です。つまり、債権者が遺産からの費用の支払いに同意しなければ、案件はやはり裁判所によって処理されることになるでしょう。

2年以内の贈与は「遺産」に計上

 また、改正案によると相続は「限定継承」となりますが、相続開始以前の2年間に被相続人より贈与された財産は、遺産として計上するとしています。その贈与の目的が債務を逃れるためであったかどうかにかかわらずです。

 このような規定は執行が非常に難しく、相続人の間で問題を引き起こしやすいといえます。故人の生前に贈与を受けた者は当然、その財産を返還したくはありません。つまり、贈与を受けた相続人は贈与が遺産分に含まれることを望みませんが、遺産総額には贈与分の価値が計上されてしまいます。結果、贈与部分の価値は、すべての相続人がまず自らの財産で返済を行い、その後、贈与を受けた相続人に対して、当該部分を請求しなければなりません。

 法務部の改正案は社会一般の期待に沿ったものではありますが、施行の細部に至る考慮がなされていません。まだかなりの修正が必要です。


徐宏昇弁護士事務所
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