【1位】馬英九政権誕生、対中関係で雪解け
3月22日行われた総統選挙で、国民党の馬英九候補が765万8,724票(得票率58.45%)を獲得し、民進党の謝長廷候補(544万5,239票、得票率41.55%)に圧勝、国民党が8年ぶりの政権奪還を果たした。
馬政権の誕生は中台関係にとって歴史的な転換となった(5月20日=中央社)
馬候補の勝因は、▽経済発展への期待▽民進党政権への失望──が2大要素だった。民進党政権時代の後半、台湾は好景気に恵まれたものの、インフレや賃金上昇の抑制で一般市民は経済成長の果実を実感できなかった。馬候補は「馬上好(当選すればすぐに良くなる)」をスローガンに、経済成長率6%、1人当たりの住民所得3万米ドル、失業率3%の「633」に代表される経済成長を公約に有権者にアピールした。
また、民進党は政権交代後に逮捕・起訴された陳水扁前総統をはじめ高官の汚職が相次ぎ、人心が離れた。独立イデオロギーに基づく政策方針によって社会対立が深まったことも嫌気された。
公式対話が再開
馬政権の誕生による最も顕著な変化は対中関係の大幅な改善だ。「一つの中国、それぞれの解釈」のいわゆる「1992年の共通認識(92共識)」に立ち返り中国との交流拡大を進めるという公約通り、6月に約10年ぶりに北京で公式対話が復活。11月に台北で行われた公式協議には、対台湾窓口機関の海峡両岸関係協会(海協会)のトップ、陳雲林会長の訪台が実現し、国共内戦終結後、最高レベルの中国高官の訪台となった。
直航も7月の空運の週末チャーター便を皮切りに、12月にはチャーター便の毎日運航、飛行ルートの短縮化、中国側の拠点都市の拡大、および海運直航が実現し、ほぼ全面的な直航が完成した。中国人観光客の受け入れも7月に実現。また、中国からパンダの「団団」と「円円」が12月贈られ、関係の改善ぶりを印象付けた。来年以降は金融部門の相互進出の開放などが進んでいく見通しだ。
こうした成果は馬政権の政治的業績であることは疑いないものの、世界的な金融危機の影響で台湾経済に急ブレーキがかかった結果、対中開放政策はいまだ景気浮揚効果を生んでいない。また、対中開放が急速過ぎるという警戒感もあって、馬総統に対する満足度は5月の58.3%から10月には23.6%と半分以下に急落した(遠見雑誌)。
対中交流拡大や内需拡大政策を経済成長に結び付け、目に見える景気回復をいかに実現していくか、また台湾独自の立場を守る姿勢に信頼感を持たれるかが、馬政権の支持回復の鍵となりそうだ。
中台関係は今年、経済分野では雪解けとも言える実質的進展があったが、台湾の国際機関参加問題や、中国の対台ミサイル威嚇問題では何ら進展がなかった。中国から見れば、台湾の国際機関参加問題で善意を示しても、そのことが統一促進に効果があるかは不明で、むしろ「二つの中国」の現状固定化につながりかねないジレンマもあるとみられる。中台双方は経済関係の強化についてはメリットが大と判断しており、来年以降も経済交流の拡大を軸に進んでいくと考えられる。
社会対立、緩和せず
民進党が独立イデオロギーに基づいた政策を意図的に推進して社会対立が深まったため、馬総統にはこれを緩和する役割が期待された。しかし、「台湾郵政」の「中華郵政」への再改名や、民進党の雲林県長や嘉義県長の相次ぐ逮捕など、独立派を圧迫しようという方向性が顕著で、民進党政権時の国民党支持者と同様、独立派は強いストレスを抱いた。独立派は馬政権のあらゆる対中交流政策を「将来の統一への布石」と見て反発するため、やむを得ない面があるが、社会対立緩和の課題は来年以降に持ち越しとなった。
【2位】中台間の海空直航、全面開放が実現
馬英九総統の公約であり、中国に進出する台湾企業や台湾人ビジネスマンなどから長らく熱望されてきた、本格的な中台間の海空直航の開放が12月、国民党政権が台湾に渡って以来約60年ぶりに実現した。これによって、中台間のビジネスや旅行での移動の利便性が大幅に向上した。
広州から桃園国際空港に到着した中国南方航空機。空運直航は、あとは定期便化を残すのみとなった(7月2日=中央社)
航空直航便はまず、6月に北京で開かれた中台公式協議で、それまで春節(旧正月)などの祭日に限って実施されてきた直航チャーター便を週末運航に拡大されることが決定。これにより7月4日、中国人観光客の訪台開放とともに週末直航便が就航した。そして11月初旬に陳雲林海峡両岸関係協会(海協会)会長が台湾を訪れて開かれた再開後2回目の中台協議で、航空直航便の週末限定から平日便への拡大、飛行ルートの短縮化、および海運直航の開放が決定された。
12月15日、平日チャーター便と貨物チャーター便、および海運直航便の第1便が出発し、中台間「大直航時代」の幕開けとなった。空運では中国人による台湾観光での商機拡大、海運では中国に進出する企業の物流コストが約1割低減され、さらに技術の流出も防ぐなどとの分析が示されており、今後の台湾経済へのプラス効果が期待されている。