玄関のドアを押すと、そこには不思議な空間が広がっていた。ほのかな照明の下に、一見おがくずと錯覚しそうな鉄くずを閉じ込めたガラスのオブジェ、丸太のカウンター、木製のプレート──。ぬくもりを感じられるおしゃれな内装に早くも料理への期待が高まる。
三井総経理(中)
三井さんはある会合で大正浪漫を訪れ、味はもちろん、美しい器やスタッフのもてなし、たくさんの料理を少しずつ味わえる点が特に気に入り、多い時は週3回、気ごころの知れた友人らと訪れるという。「ここは一緒にくる人たちに自信を持ってお薦めできますね」と三井さん。
今回いただいたのは1,800元(お酒は含まず)のおまかせ料理。まずはビールで乾杯し、突き出しの後、アワビの煮付け、イクラ、ユリ根のサラダ、湯葉のゴボウ巻き、ズワイガニの豆腐など、6種類が並んだ。美しい器と上品な盛り付けで、まず視覚でいただく。一口サイズの量なので、たくさんの料理を「ちょこっと」ずつ味わえるところが魅力だ。実際、何品出てくるのかを数えていたが、はしを動かすことに気を取られ、途中でやめてしまった。20品以上はあったのではないだろうか。カウンターの向こうの、料理長が常連である三井さんにタイミングよく刺身を出す。オーナーやスタッフが日本語を話せるので料理の好みも伝えられる。
焼き魚 ノドグロ
細やかな気配りともてなしの心
自家製漬物は赤玉ねぎ、山桃、大根の3種。途中からネタの新鮮な寿司が一貫ずつ皿に並べられた。トロや北海道産のウニなど、次から次に出される海の幸に舌鼓を打つ。寿司は最後にどんと並ぶのではなく満腹になる前に小出ししてくれるので、ゆっくり味わえる。北海道産の岩ガキも塩でいただいた。本日の焼き魚はノドグロだった。お吸い物はとこぶしのうまみがじわりと出ていて美味だった。デザートはレモンのシャーベット、抹茶のムース、ごま豆腐、果物、と最後まで楽しめた。
オーナーも料理長も台北の有名な日本料理店で修業を積んできたという。日本人に対する細やかな気配りやもてなしの心、そして腕は確かだ。「翌日はゴルフだと話すと、料理長の気持ちで傷みにくい巻物をさっと用意してくれたことがあった」と三井さんが話す。お酒も純米大吟醸「十四代 龍の落とし子」など日本でも入手が困難な銘酒が並ぶ。
海鮮のネタの新鮮度は文句なしだった。台北市復興南路の微風広場のはす向かいの小道に入ったところに、個室2室を合わせ全36席ある。隠れ家的な空間で本格的な「和」を堪能できる大正浪漫に行けば、期待以上の満足感が得られるはずだ。
(取材/ワイズコンサルティング・七沢愛果)
大正浪漫
住所:台北市復興南路一段30巷1号
電話番号:02-2772-0680
営業時間:昼12~14時 夜18~22時(日曜定休)
北海道産の岩ガキ