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作成日:2009年7月15日_記事番号:T00016607
KPMG 分かる台湾会計
第6回 旧制度の退職準備金拠出に係る税務上の取り扱い変更について
旧制度の退職準備金の拠出に関して、2009年6月3日付で財政部より新たな通達が公表されました。今回はこれを取り上げてみたいと思います。なお、本稿の意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。
【今回のポイント】
旧制度の退職金準備金の拠出に関して、従来は税務上の損金算入額に制限が設けられていましたが、09年6月3日付で当該制限が撤廃され、拠出額の全額を損金算入することができるようになりました。
旧制度の退職準備金の拠出
05年7月1日に退職金新制度(労働者退職金条例)が施行された後、雇用主は旧制度(労働基準法)の適用対象となる従業員(新制度の開始以降も旧制度の適用を選択する者、および新制度を選択したが旧制度の勤務年数を留保する者)のために、旧制度の退職準備金の不足分を5年にわたって(=10年6月末までに)拠出しなければならないとされています。
改正の背景
従来の財政部の通達によれば、旧制度の退職準備金の拠出に関しては、当年度における旧制度適用の従業員に係る給与総額の15%を超えない限度内でのみ税務上の損金として計上することができると規定されていました。
しかしながら、新制度の施行後、旧制度に係る退職準備金の不足額を一括拠出した場合、上記の限度額を超過することから、国税局により当該超過部分を損金不算入とされてしまい、これに対して国税局に対して税務訴訟を起こし超過部分の損金算入を求める争議がしばしば発生していました。
今回の改正点
そこで、財政部は、09年6月3日付で新たな通達(下記ご参考)を公表し、上記の損金算入限度額を緩和しました。すなわち、旧制度に係る退職準備金を一括拠出するか、数年にわたって分割拠出するかにかかわらず、旧制度適用の従業員に係る給与総額の15%を損金算入の限度とする税務上の制限を撤廃しました。
これにより、09年6月3日以降、指定金融機関(台湾銀行)における退職準備金監督委員会専門口座への退職準備金の拠出については、支出年度においてその全額を損金算入できることになります。
旧制度の退職準備金の不足額をいまだ拠出していない会社におかれましては、上記改正のほか、当該拠出の法令上の期限が来年(10年6月末)に迫っていることに留意し、現時点において今後の拠出計画等を策定しておくことが望ましいと考えられます。顧問会計事務所等とも相談しながら、旧制度の退職準備金の拠出について、社内で再点検されることをお勧めいたします。
<参考>
財政部09年6月3日付
台財税字第09700622360号通達(日本語訳)
一.05年7月1日に労働者退職金条例が施行された後、営利事業者が当該条例の第13条第1項の規定により、労働基準法第56条第1項の規定に従い、当該条例の施行後5年以内に、労働者退職金を充足するまで一括または数年にわたって、行政院労工委員会が指定した金融機関における当該事業者の労働者退職準備金監督委員会名義の専用口座へ拠出した場合、当該拠出額については拠出年度において全額を損金算入することができる
二.本部05年7月1日付台財税字第09404543590号通達の規定二については、当通達の公布日より適用を停止する
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KPMG安侯建業会計師事務所 久保田裕
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