ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第63回 コピー商品の取り締まり


ニュース 法律 作成日:2010年4月7日_記事番号:T00021933

産業時事の法律講座

第63回 コピー商品の取り締まり

 
 台湾では知的財産に関する法律が整備されているにもかかわらず、街中やインターネット上で公然と、模造・コピー商品(以下「模造品」)が販売されています。これでは、自社製品が模造され、被害者となったメーカーが、台湾政府は知的財産権を保護していないと感じてもおかしくないでしょう。

 台湾政府は実際には、経験豊富で使命感あふれる知的財産権保護の警察チームを成立させています。さらに、経済部知的財産局が、一般の刑事も含め、知的財産権の保護に功績を挙げた者に対し、破格の奨励金を提供しています。また、各地の検察署も、知的財産権の侵害案件に対し、分類ごとに目標検挙件数を掲げています。ただ、知的財産権を守るために、この制度をどのように利用すればよいのかが、知的財産権の権利者に知られていないだけなのです。

 自社製品の模造品が市場に出回っていると知ったとき、弁護士は通常、その模造品を数点購入して領収書を入手し、知的財産警察に連絡して取り締まりを求めるようアドバイスします。この方法は間違っていないのですが、実はこれでは警察が案件を処理するのは困難です。

本当に模造品か?

 警察は、模造品の案件を処理する際に、まず、その製品が模造品であること、つまり商標権者や著作権者からライセンスを受けていないことを証明しなければならなりません。その際、「模造品」が本当に模造品かをどうやって確認するかが難しいところです。

 筆者は以前、商標権者が模造品だと主張した製品が、実はライセンス料が支払われていないだけのライセンス製品だったというケースに遭遇したことがあります。これでは、案件を受理した警察に対し、まるで権利者に代わってライセンス料を取り立てろと言っていることになってしまいます。

 また、模造品の多くは、本物とライセンスタグやシールまで瓜二つで、全くよく似ています。もし権利者の弁護士が、模造品と本物の違いをきちんと説明できなければ、警察は模造品を差し押さえられず、取り締まることもできません。

模造技術も発達

 警察は次に、その模造品がどの法律条文に違反しているかを確認しなければならなりません。ご存じのとおり、科学技術の進歩に伴い、模造にもハイテクやコンピューター技術が幅広く利用されています。そこで、多くの国・地域では、これらの新しい犯罪方法に対応した法律が制定されています。

 こうした新しい模造技術について、権利者が科学的証拠を提供できない場合、裁判となった際に、検察官の起訴内容は、弁護士の質疑に応じられ、裁判官の信用を得られるものとなるでしょうか。つまり、たとえ権利者の弁護士が、模造技術の説明や証明を行っても、警察や検察に信用されなければ、通常、案件は成立しないのです。

 そのため権利者にとって、警察との事前の意思疎通は非常に大切です。もし、マーケットで模造品を目にしたとしても、慌てて警察へ行く必要はありません。まずは模造品の分析を行い、これらのデータを経験豊富な弁護士に提供し、豊富な図と文章によって、鑑定プロセスと、当該製品が模造品であると認定した根拠を説明した鑑定書を作成してもらうのがよいでしょう。

 通報の際には、弁護士を通じて鑑定書を提出するとともに、口頭でも警察と検察官に対して説明すべきです。警察の捜索や差し押さえの現場には、必要なツールを持ち込んで、その場で検査すると、取り締まりがスムーズにいきます。

 こうした準備を整えれば、案件が裁判に持ち込まれたとしても、裁判官の信用を得やすく、早期に案件をクローズでき、有利な結果を引き出すことができます。

 以上の説明からお分かりのように、日々進化している模造技術に対抗するため、周到に準備しさえすれば、警察と検察の協力を得られ、模造品に関する完全な法規を利用して、取り締まりに持ち込むことができるのです。


徐宏昇弁護士事務所
TEL:02-2393-5620 FAX : 02-2321-3280
MAIL:hubert@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座