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第66回 「マジコン」は著作権法違反


ニュース 法律 作成日:2010年5月26日_記事番号:T00022964

産業時事の法律講座

第66回 「マジコン」は著作権法違反

 
 台湾では先日、Nintendo Wiiの改造行為が著作権法違反であるという判決が確定したばかりですが、今度はNintendo DS(以下「DS」)の「マジコン」(ゲームソフトをコピーして遊ぶ機器の総称。「マジックコンピューター」の略)を違法とする判決が下されました。

 裁判所は、マジコンは著作権法における「著作権者が制作した著作への有効なアクセスまたは利用の禁止、制限を回避し、利用を可能にする部品」に該当するため、販売者に6カ月の有期刑と「Acekard 2」型マジコンの没収を命じました。

信号で正規品と誤認識させる

 マジコンは、台湾では「DS転接カード」、英語では「Nintendo DS game copier」と呼ばれています。マジコンはDSのゲームカートリッジと同様の形状と寸法で、接触ピン部分があるほか、Micro SDを差し込むスロットが付いています。使用者は、DS用のゲームをコピーしたMicro SDをマジコンに差し込み、さらにマジコンをDS本体に差し込むことでMicro SDにコピーしたゲームで遊ぶことができます。

 DSにはゲームカートリッジが本物であるかどうかを判断する検査機能があります。もしゲームカートリッジから送られてくる信号が正しければプログラムを実行し、間違ったものであれば実行しません。マジコンはDSに差し込まれると、任天堂の登錄商標を表す信号を送り出すので、DSの画面上には任天堂の商標が表示され、正規品と誤認識することになります。

 裁判所は、このDSの検査機能が、他者の著作(ゲームソフト)への有効なアクセスまたは利用を禁止、制限をしていることから、著作権法第3条第1項第18款における「コピー防止手段」であると認定。今回差し押さえとなったマジコンは、DS本体に正規のゲームカートリッジだと誤認識させており、著作権法第80条之二の「コピー防止手段を回避する部品」に該当、法律により公衆に使用させてはならないことから、マジコンの販売を行った被告は著作権法違反であると認定されました。

 多くの場合、マジコン販売業者は同時にコピーゲームを記録したMicro SDを併せて販売しています。Micro SDにコピーゲームが記録されていない場合も、店舗内のコンピュータにコピーゲームを保存しておき、購入者にダウンロードさせるか、代わりにダウンロードする場合がほとんどです。ゲームプログラムの大きさにもよりますが、4ギガバイト(GB)のMicro SDであれば、約80種類ものゲームをコピーすることができるため、ゲームソフト販売メーカーである任天堂やその他のゲームソフトメーカーの損失は莫大(ばくだい)なものとなります。

コピー製品撲滅への指標に

 任天堂は自らの権利を侵害するマジコンを取り締まるため、世界各地で訴訟を提起し、成果を挙げています。台湾でも本件によって販売者に刑事裁判で有罪判決が下され、マジコンは著作権法に違反するものであると明確に定義されました。

 本件のもう一つの意義は、科学技術の進歩に伴い、マジコンのような権利侵害製品の技術が進化を遂げる中、過去に制定された法律でどのように新しい形態の犯罪を規定するかという法執行上の重要な課題が明らかになったことです。本件における裁判所の「コピー防止手段を回避する部品」の認定は、コピー製品撲滅への一つの指標となりました。


徐宏昇弁護士事務所
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