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第69回 両岸知的財産保護協力協議


ニュース 法律 作成日:2010年7月14日_記事番号:T00023973

産業時事の法律講座

第69回 両岸知的財産保護協力協議

 
 6月29日、台湾と中国は海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)と同時に、知的財産保護に関する協定「両岸知的財産保護協力協議」も締結し、現在立法院で審議中です。今回はこの協定の内容をご紹介します。

「優先権」が最重要ポイント
 
 同協定の最重要ポイントは、中台が相互に特許および商標申請の「優先権」を認めるとした点です。優先権とは、同様の特許および商標申請において、その申請が行われた国・地域は問わず、先に行われた申請が優先される権利です。その後の特許要件の審査なども、すべてその申請日を基準として行われます。

 台湾は1990年代、日本、米国、欧州、豪州などと優先権を承認する協定を締結しました。2002年に世界貿易機関(WTO)に加入した後は、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」により、WTO加盟国との間において優先権が認められました。

 しかし中国はWTOに加盟しているものの、台湾は中国の一部であり、台湾人は中国国民であるという考えの下、台湾人が台湾で申請した特許については中国での優先権を承認していませんでした。また台湾も、この中国の対応がTRIPS協定の互恵原則に反するため、中国で申請された特許の優先権は認めてきませんでした。

 このような状況はどちらにとっても有益なものではないため、長年にわたって解決の方途が模索されてきました。今回の協定が立法院の審議を通過した後も、まだ多くの討議と行政判断を経る必要があるでしょう。

中国側の努力が必須
 
 本協議では特許と商標申請の優先権のほかにも、植物の新品種に対して与えられる知的財産権の「育成者権(Plant breeder’s right)」の申請と優先権も認められ、保護を申請できる植物の種類も増えました。さらに中台で著作権の認証制度を設立する規定も設けられました。しかしこれらの実現には、関係機関の十分な技術と専門能力、そして執行する強い意欲が必要ですので、中国側にかなりの努力を強いることになると考えられます。

 また、同協議には中台双方が法執行のために協力体制をつくり、海賊版や模倣品の取り締まり、著名商標、地理標誌、著名産地の名称などの保護、農作物の正しい産地表示の強化などが行われることが明記されました。

 実はこれらの項目は、台湾が中国に要求しているものばかりです。中国が自国の経済発展に有利と判断するかどうかが、実現への鍵と言えます。

権利侵害のHPを調査
 
 海賊版や模倣品の取り締まりについては、特に「インターネットを通じて海賊版、模倣品を提供、または補助」し、権利を侵害するホームページ(HP)の調査を行うことが明記されています。

 このような中国のHPは台湾のみならず世界各国の知的財産に甚大な被害を与えています。HPの提供者または連絡人を突き止めることも非常に困難です。

 協定締結後、このようなHPを根絶する取り組みがなされれば、台湾は世界の知的財産保護に対して大きな貢献を果たすことになるでしょう。

 今回の協定内容は、本来TRIPS協定で実現されるべきだった内容と言えます。中には実現が難しい内容も含まれていますが、もし成果を上げることができれば、それは中台だけではなく世界中の期待にも応えることになるでしょう。
 
徐宏昇弁護士事務所

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