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第68回 ヒトデータベース管理条例


ニュース 法律 作成日:2010年6月30日_記事番号:T00023677

産業時事の法律講座

第68回 ヒトデータベース管理条例

 
 「人体生物資料庫管理条例(ヒトデータベース管理条例)」が2月3日に公布、施行されています。この条例は制定過程において、医薬業界以外のほとんどの人が関心を示さず、公布後にも特に議論は起こってはいません。ですが同条例は医学界で最近注目されている個人化医療研究と関係が深く、あらゆる生物医学(バイオメディカル)研究を対象に含んでいますので、今回取り上げてみたいと思います。

 条例が規定する主な対象は、「ある特定のグループまたは特定の族群(エスニックグループ)を基にした」ヒト検体の収集にかかわる研究です。こうした研究でヒト検体を収集し、研究データを作成し、協力者の個人データと結び付けたデータベース構築は、もちろん対象となります。

 条例の規定によると、ヒトデータベースの構築は、政府にあらかじめ許可を得なければなりません。違反した場合は1,000万台湾元以下の罰金が科されます。条例の施行以前に構築したデータベースは、1年以内に許可を得なければ違法となります。また条例には、生物医学の研究に対して、許可を得ていないヒトデータベースを使用してはならないと規定されています。

 条例が定めるデータベース構築者の義務は、主に以下の通りです。▽あらゆる研究は「倫理委員会」の監督と審査の下で行われ、あらかじめ定めた研究計画に沿って進められなければならない▽すべての個人データを秘密保持しなければならない▽構築者は協力者に対して詳細を説明する義務を負い、同意を得なければならない▽協力者はいつでも協力を打ち切ることができ、このとき構築者は協力者の検体および関連データを削除しなければならない▽研究で生じた利益は、協力者の属する特定グループまたは特定の族群に還元されなければならない──。

 台湾の法律を海外で適用することはできませんが、条例にはヒト検体を海外に輸出してはならないと規定されています。そのため、海外の研究機関が台湾で行う研究、または台湾人に対して行う研究は、すべてこの法律の対象に含まれます。

実際のデータベース計画

 この条例の制定より以前から、台湾では実際に大規模なヒトデータベース計画が始動されていました。この計画は4年かけて、▽雲林・嘉義・台南(雲嘉南)▽桃園・新竹・苗栗(桃竹苗)▽花蓮・台東(花東)──の3エリアで、計2万5,000件のヒト検体を収集し、DNAを広く分析するというものです。

 この計画の目的は、台湾の4大族群(閩南人、客家人、原住民、外省人)のデータベースを構築し、研究を重ね、将来の生物医学研究の基礎データとすることです。もちろん、日本や韓国、中国などが40万~50万人単位で行っているものとは比べものにならない規模です。ただ、台湾は狭い土地にさまざまな人が住んでいるため、生物医学研究で優位性があり、数々の研究は精度が高く、目を見張る結果を出しています。このデータベースが完成すれば、きっと研究成果は見逃せないものとなるでしょう。

 また同条例では、海外の医薬品メーカーが台湾人の遺伝子特性に関する個人化医療の研究を行う場合、既に構築されているヒトデータベースのデータをそのまま利用する場合を除き、政府の審査、許可、監督を受けなければなりません。さらに、ヒトデータベースは許可を得た後、その研究と応用が監督下に置かれる上、外部から知られやすくなります。

 そのため海外の医薬品メーカーは、条例が施行されて間もない今のうちに今後の対策を練ることが、条例施行によって不利な立場に追いやられないために必須でしょう。


徐宏昇弁護士事務所

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