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作成日:2010年5月5日_記事番号:T00022522
産業時事の法律講座
第65回 「民事工程専門法廷」について
新聞報道によると、司法院は台湾初の民事工程(工事)専門法廷を台北地方裁判所に設置することを決定し、裁判長を任命しました。しかし、自主的に担当裁判官になろうという裁判官は、まだ現れていないようです。
台湾における工事に関する民事紛争は、主に政府調達と公共工事に関するものです。原因は、台湾においては政府が最大の「発注者」であるという事情、それに政府担当者が役人意識から検収や支払いの際、特に工期に遅れが出たり、設計に変更があった場合、業者に対して公正な態度を取ろうとしないことが多いためです。そのため無数の紛争が発生しています。
公共工事紛争解決の歴史
台湾政府は1990年代前半、大量の公共工事案件に関する紛争が裁判所で審理されており、長年にわたって審理が終結していないばかりか、業者が判決に強い不服を抱いていることを発見し、「工程仲裁」制度を制定しました。この結果、大部分の政府調達、公共工事で紛争が発生した際には、まず仲裁を行うことが規定されました。当時は多くの公共工事の専門家が仲裁に参加していたため、その豊富な経験を基に出された判断の多くは、業者ばかりか、政府担当機関にも受け入れられるものとなりました。
その後90年代後半に設立された行政院公共工程委員会は、「調停」制度を制定。公共工事に関する紛争はまず調停を行うことが法律で規定されました。21世紀に入ったころまでは、同委員会の調停は政府調達、公共工事を監督する機能を保っていました。多くの調停で提示された調停案は、当該案件の業者に相応の報酬が支払われる根拠となるだけでなく、他の案件においても業者が権利を主張する根拠となりました。
しかしこの調停制度はその後形骸化し、調停委員に公平な判断を行う能力も意思もなくなってしまったようです。特にここ数年は、業者が巨額の調停費用を支払ったにもかかわらず、効力を持たない調停案を聞かされた、果ては何ら解決策が示されなかったというような状況をよく耳にします。そのため業者は法廷に問題解決の道を求めるようになったのです。
公共工事案件の特徴は、さまつな部分が多く煩雑であることです。法の執行者の立場からすれば、資金力のある企業が政府に支払いを求めるという構図は、深く追及すべき法律的問題も見当たらず、正義感を満足させる達成感も得られにくいのかもしれません。これが民事工程専門法廷の担当に一人も裁判官が名乗りを挙げていない理由なのでしょう。
専門法廷の設置で大きな変化はない
過去10年の間に台湾の裁判所の状況は劇的に変化しました。審理の専門性に関しては、完全とまでは言えないまでも、以前とは比べものにならないほど進歩を見せています。このため民事工程専門法廷が設置されたからといって今後、判決結果が大きく変わるということはないでしょう。
業者から見ると、政府入札案から発生した紛争が最終的に裁判所で審理されるのであれば、最も重要なのは契約締結時に経験豊富な弁護士に、政府より提供された契約書を修正してもらうことで将来、竣工時の保証を得ることです。
その際チェックしなければならない重点は、台湾のあらゆる政府調達と公共工事で必ずといっていいほど発生する、工期の遅れ、設計の変更、土地徴収の遅延、政府の管理能力の低さなどに関する法律問題が含まれます。また、竣工時の検収と費用計算の解釈権、判断基準も契約の中に明確に規定しなければなりません。そうすることで、紛争が発生した際に有利な判決結果を得られ、裁判の終結、判決確定までの時間を短縮することができます。
徐宏昇弁護士事務所
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