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作成日:2010年4月21日_記事番号:T00022229
産業時事の法律講座
第64回 アダルトビデオの著作権
報道によると、日本のアダルトビデオ(AV)業者が台湾で弁護士を通じて記者会見を行い、台湾の業者が無断でケーブルテレビなどを通じて日本のAV作品を放映したり、インターネットを通じて作品をダウンロードさせていることに対し、行為の中止および正規ライセンスの取得を要求し、改善されない場合は提訴も辞さないとの強い姿勢を示しました。
しかし台湾の裁判所では、AVは「色情」(アダルト)著作物であると判断され、最高裁の見解によると著作権は認められていません。
アダルト作品に著作権は認められない
こうした最高裁の見解は、過去に「プレイボーイ」誌に対して出された「猥褻(わいせつ)な作品はそれ自体が違法であるため、著作権は認められない」という判例が基となっています。この判例は長年台湾の法律界に効力を発揮しており、これに対し反対の声が上がったことはありません。
最高裁は1999年の裁判でも、「アダルトDVD」は著作権法上の著作物として保護されないとの判決を下しています。最高裁は判決理由として、「著作権法の目的は、個人または法人の知的生産物である著作物を保護し、大衆に公平に利用させることのほか、健全な文化の発展に寄与することにある」との認識を示しました。
その上で「アダルトDVDは社会秩序を乱し、公共の利益に反するため、国家の社会発展を促進するとは言えず、著作権法の立法目的にも反する」との判断を下しました。このため、アダルトDVDは著作権法上の「著作物」とは認められず、著作権法による保護は受けないという結論となりました。つまり、最高裁の論理からいくと「権利が保護されるのは『公序良俗に反しない著作物』に限られる」ということになります。
しかし、よく考えれば最高裁の論理は穴だらけで、独裁時代の権力者心理を強く残したものであることが分かります。例えば、AVは多くの人が見たいと思っています。それなら一概に「社会秩序を乱し、公共の利益に反する」と言えるでしょうか?(もし誰も見たくなければ、この問題は存在しません)また、「社会秩序を乱し、公共の利益に反している」ことが「著作権法の立法目的に反している」というのは本当でしょうか?(台湾特許法の規定には「公共秩序、善良風俗または衛生を害する」ものは実用新案申請できないとの規定がありますが、発明特許にそのような規定はありません。著作権法も度重なる改正を行っているにもかかわらず、こういった規定は設けていません)
最高裁の見解は時代遅れであるばかりか、その論理的基礎も危ういため、修正が必要と考えられます。会見で知的財産局員が「(同問題の成り行きは)裁判所の見解がどのように変わるかによる」と発言したのはこのためです。
正攻法は効率的とは言えない
しかし、ビジネス的見地からみれば、日本のAV業者が台湾で権利を主張するために、これまでほとんど揺らぐことのなかった法的見解に正面から挑戦し、最も困難とみられる著作権法上の保護を訴えるのは、現実論として効率的な方法とは言えません。 法律的見解というのは不変ではありませんし、台湾社会が新しい考え方を受け入れるスピードも遅いわけではありません。しかし、新しい見解を打ち立てることで、既に侵害されている権利を保護しようとする方法は実際的な投資とは言えません。
AVに対して法的保護を得ようとするのであれば、著作権法以外に商標法による保護を行うことも可能と考えられます。無断で配布・放映されたAVのDVD、パッケージ、作品内容の中に日本のAV業者の商標が含まれていれば、それは商標法違反となり、法的処置をとることができます。
たとえ台湾の業者がパッケージの商標を削除した場合でも、作品中にAV業者の社名や、著作権表記などが含まれていれば、刑法上の「私文書偽造罪」を構成することになります。そして、これら違法行為は、DVDとパッケージの外観、内容を一見するだけで容易に証明できるのです。
日本のAV業者による台湾での権利主張は、社会的な注意を喚起することに成功しました。しかし、違法コピーや無断放映を防止するという現実的な目的を達するには、さらなる法律上の研究が必要と思われます。
徐宏昇弁護士事務所
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