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作成日:2010年8月25日_記事番号:T00024855
産業時事の法律講座
第72回 外国人雇用に関する新規定
台湾政府は海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)に基づいて、中国との関係を発展させ、人材の交流を深める考えですが、その他の国との人材交流については逆に規制を厳しくしています。
このことは、外国人の雇用に関する主務官庁である行政院労工委員会(労委会)が今年1月29日に公布した「外国人從事就業服務法 第46条第1項第1款至第6款 工作資格及審査標準」で、雇用主の資格に対し、さらなる制限が設けられたことからも見て取れます。
専門的、技術的人材雇用は厳しく
就業服務法第46条第1項第1款至第6款の職業とは、▽専門的、技術的分野▽華僑、外国人による投資者、または事業設立者としての管理業務▽教師▽運動または芸術、演芸関連──などですが、台湾企業、外資企業を問わず、外国人を雇用するのは主に「専門的、技術的分野」です。華僑、外国人による投資企業については、その管理者が外国人である必要はなく、また絶対的件数も多くないことから、影響は大きくありません。
この審査標準によると、外国人を専門的、技術的分野の仕事に雇用する場合、その職種は審査標準に定めのあるもの、および主務官庁が指定したものに限られます。つまり、もしそれ以外の職業に外国人を雇用する場合、申請手続きがとても複雑なものになるということです。
さらに、審査標準は「雇用される外国人は、審査標準に規定のある要件を満たしているほか、下記の資格を少なくとも一つ以上有していなければならない」とも規定しています。
1. 専門ライセンスがある
2. 修士学位を取得、または大学卒業後に2年の就業経験がある
3. 国際企業に1年以上就業し、台湾へ派遣された
4. 5年以上の就業経験があり、優秀な結果を残した
また、雇用主に関しては、「外国人を不動産仲介業務、移民業務、環境保護業務、文化、運動、レクリェーションサービス業務、製造業、卸売業務などのホワイトカラーとして雇用する場合、雇用主は以下の条件を満たしていなければならない」と規定しています。
1. 台湾企業で設立1年未満の場合、500万台湾元以上の払込資本金があること
設立1年以上の企業の場合、直近1年または3年の平均売上高が1,000万元を超えており、実質貿易額が平均100万米ドルを超えている、または代理店手数料収入が平均40万米ドルを超えていること
2. 外国企業の支社で設立1年未満の場合、台湾での運営資金が500万元以上あること
設立1年以上の企業の場合、直近1年または直近3年の平均売上高が1,000万元を超えており、実質貿易額が平均100万米ドルを超えている、または代理店手数料収入が平均40万米ドルを超えていること
雇用延長時にも適用
この規定のおかしなところは、外国人の雇用を申請する際には前述の条件を満たしていた雇用主が、数年後に売上高または平均売上高が条件に満たなくなれば、雇用の延長が認められないという点です。その際にはどんなに努力をしても、雇用していた外国人を出境させなければならなくなるでしょう。これは企業にとっても大きな損害ですが、雇用されていた外国人にすれば、保障が一切ないようなものです。
行政法の基本原理に違反
このような労委会の審査標準は、行政法の基本原理の多くに違反しています。もし何らかの案件が行政裁判所まで上訴されれば、労委会の立場は危ういものになることは間違いありません。しかし、残念なことに、外国人雇用が許可される否かは、時間的な要素を含んでいるため、行政訴訟での根本的な問題解決は難しく、行政裁判所で審査される案件は少数にとどまるでしょう。
つまり、裁判所が今回の労委会の審査基準の違法を宣告するまでの間、外国人を雇用する企業は、企業の業績の浮き沈みによって外国籍の従業員の権益に影響が出ないよう、ひたすら経営努力を重ねるしかありません。
徐宏昇弁護士事務所
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