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第75回 知的財産裁判所の難題


ニュース 法律 作成日:2010年10月13日_記事番号:T00025853

産業時事の法律講座

第75回 知的財産裁判所の難題

 
 司法院は9月、「知的財産案件審理制度研究修正委員会」を立ち上げました。この委員会は、現行の知的財産案件審理制度の不備を研究し、改正法案を立法院に提出、法改正を行うことを目的としています。

 修正法案の中には、知的財産裁判所(以下「知裁」)における民事事件の第一審、第二審の担当裁判官を厳格に区分けし、同一の裁判官が審理することを防止する条文が含まれる見込みです。

 知裁の裁判官は絶対人数が少なく、同一の裁判官が第一審を審理した後に、続けて第二審も審理することがあります。このような現状は、訴訟の審級制の意味を失わせるものです。

体制が引き起こす悪体質

 知裁はさらに大きな問題を抱えています。知裁には現在、ベテランの裁判長が審判長を務める実質審理を行う法廷が2つしかありません。さらに知裁設立から2年間、この2つの法廷の裁判官はほとんど入れ替わりがありません。こういった体制が体質悪化を引き起こし、知裁の判決は瑕疵(かし)がないとは言い難いものになっています。

 それでは一体どのような問題があるのでしょうか?

同じ裁判所で異なる見解

 知裁は民事、刑事、行政事件にかかわらず、知的財産案件の第二審を管轄しています。制度上、知裁A法廷の第二審判決が最高裁判所や最高行政裁判所へ上告された後、原判決が破棄または差し戻しされ、知裁B法廷が同案を審理することや、知裁A法廷が第一審判決を下した後、同案が控訴され、知裁B法廷で審理されるようなことも発生します。

 問題の一つは、多くの問題に対する見解が同じ知裁の2つの法廷で異なっていることです。過去多くの案件において、A法廷の判決に対し控訴が行われた後、B法廷に破棄されたり、A法廷の二審判決が第三審により破棄され、差し戻し審を担当したB法廷がまったく異なる判断を下す、ということが起こっています。

 さらに、同じ裁判所の同僚に判決を取り消されたり破棄されることは決して気分のいいものではありません。同僚の判決をたびたび取り消せば、逆に判決を取り消された裁判官が自らの判決を何の遠慮もなく取り消してくるようになるかもしれません。

 このような心情的な問題から、例えばA法廷の二審判決が第三審により破棄、差し戻しされた後、B法廷の裁判官は第三審が判決の中で違法を指摘した部分に対してのみ審理を行い、A法廷での判決については再審理を避ける傾向があります。

当事者の利益を守る改定を

 このような方法は同僚に対して負い目を作らず、自らの判決の維持率も損なわないという、彼らが現在考えつく中では最も折衷的な方法でしょう。

 しかし、台湾の最高裁判所および最高行政裁判所が第二審の判決を取り消す、または破棄する際、通常は判決の中で最も重大で明確な誤りに対してのみ指摘を行うだけで、必ずしも二審の判決における誤りすべてを指摘するわけではありません。

そのため、このような方法では案件当事者の法律上の利益が損なわれる可能性が高いのです。残念なことに、司法院の法改正案は、ここまで深い問題を考慮したものとはなってはいません。

徐宏昇弁護士事務所

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