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第80回 台湾産業の法的成熟はいつになるのか?


ニュース 法律 作成日:2010年12月22日_記事番号:T00027340

産業時事の法律講座

第80回 台湾産業の法的成熟はいつになるのか?

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、台湾、韓国の液晶パネルメーカーが価格カルテルを結び、EU圏の消費者に損害を与えたとして、2010年12月8日、台湾のパネルメーカー4社に対して総額4億3,000万ユーロ(約474億円)を超える制裁金を科すと発表しました。

 この決定は、金額の大きさ、国家イメージへのダメージという面から大きな問題となっており、台湾の重要産業である液晶パネル関連企業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。しかし、台湾のメディアは、韓国メーカーを「密告者」と非難するばかりで、台湾の関連メーカーに多大な影響が生じる可能性については指摘していません。台湾政府も台湾メーカーの行為が台湾の消費者に損害を与えてはいないかと調査することもせず、中国投資を経済問題解決の「万能薬」と見なし、友達光電(AUO)の同市場への投資認可を急いだだけでした。

 今回台湾パネルメーカーでは奇美電子(チーメイ・イノルックス)に3億ユーロ、AUOに1億1,680万ユーロの制裁金が科せられました。この2社の2010年の財務報告書を見ると、制裁金の額は、奇美電1〜9月の連結純利益93億台湾元の129%、AUO1〜9月の連結純利益181億5,000万元の25.3%にも上る高額なものとなっています。

他の市場で訴えられる可能性も

 日韓台の液晶パネル業者が米司法局から反トラスト法(独占禁止法)違反に問われた際、AUO以外の台湾メーカーはその容疑を認めました。報道によると、その後米国では9つの州でパネルメーカーの反トラスト法違反に対する調査が行われているということです。

 今回のEUと米国での案件の違いは、台湾メーカーが今回、上訴を行い、時間稼ぎをするという対応を選択しようとしている点です。これは米国市場の重要性が欧州のそれと大きく異なることを示しています。時間稼ぎの結果、制裁金を減額させることも可能かもしれません。ともすればパネル産業が衰退するまで罰金の支払いを先延ばしできるかもしれません。しかし、米国で容疑を認めた前例がある以上、EUの判決を覆すのは難しいでしょう。

 さらに、もし同業者または消費者が、日本など他の市場において同様の訴えを行った場合、台湾メーカーが不利な判決を受けるのは目に見えています。

 台湾は世界の主要液晶パネル生産拠点となった後、世界最大の液晶テレビ生産国となる兆候がありました。しかし、歴史的に見れば、台湾が「世界最大の生産地」になろうとする際、いつも先進国の特許権者がライセンス料を要求し、主要市場は台湾メーカーの「ダンピング」調査に取り掛かりました。この流れは「台湾経済の奇跡」が生み出される過程で何度も繰り返されました。

もはや無視できない法的コスト

 周知のとおり、多くの場合、台湾が世界最大の生産国となったのは、先進国家が生産しなくなった製品についてです。その理由は優れた生産管理技術により、低コストで良質な製品を生産できるためだと言われてきました。しかし、政府と企業には「法的コスト」という意識が希薄で、コスト計算をする際、この大きな比重を占める可能性のある項目を除外してしまっています。このようなやり方で「世界最大の生産国」となろうとすれば、より多くの法的リスクがもたらされることは想像に難くありません。

 一連の液晶パネル・カルテル事件は、もはや法的コストが単なる外部費用あるいは機会費用ではないことを物語っています。台湾政府と企業が「世界一」を目指すためには、これまでの「モノマネ」を捨て「公平取引」の概念をしっかり持って、各国の関連法規を真に理解、遵守することで、正々堂々とハイテク大国へ成長しなければなりません。

徐宏昇弁護士事務所

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