ニュース 法律 作成日:2011年2月23日_記事番号:T00028371
産業時事の法律講座「陷害教唆(おとり捜査)」は刑事案件でよく見られる捜査方法の一つです。罪を犯す気がなかったのに、警察にそそのかされて犯罪を決意するというものです。通常は、被害が発生する前に警察が身分を明かして逮捕します。
こうした捜査方法はインターネットの普及に伴い、今まで以上によく用いられるようになりました。台湾の警察はいわゆる「ネットパトロール」が大好きなので、ネット上で罪を犯しそうな人を見つけ出し、おとり捜査を開始します。警察はターゲットを定めると、ショートメッセージサービスやメール、携帯電話などで連絡し、取引します。明確な犯罪の意図がなかった場合でも、警察の誘導に乗せられて犯罪を決意してしまうケースもあります。こうして犯人を検挙することをおとり捜査といいます。
最高裁判所はおとり捜査に対し、▽もともと犯意がなかった者に犯罪をそそのかす▽犯罪捜査に必要な限度を越えている▽憲法の基本的人権の保障に反している▽公益を守ることにならない▽おとり捜査で得られた証拠は「法定プロセスに反して得られた証拠」である──と考えています。
一方、おとり捜査のほかに「釣魚捜査(おびき出し捜査)」という捜査手法もあります。これは捜査テクニックを駆使して、もともと犯意がある人をおびき出して逮捕することです。この捜査方法でも「ネットパトロール」がよく用いられています。
最高裁判所はおびき出し捜査を、▽合法的な捜査テクニックの一つ▽おびき出し捜査で得られた証拠は「法定プロセスに反することなく得られた証拠」──と考えています。
おとり捜査とおびき出し捜査の違いは、警察が促したために犯罪を決意したかどうかです。裁判所が調査する際のポイントは、警察が接触する中で、どのような方法で犯罪を行う気にさせたかです。つまり被告となった際、警察が脅迫、誘惑、詐欺などの方法で犯罪を促したと証明できれば、「おとり捜査」だったと認められます。
「おとり捜査=無効」ではない
しかし台湾の現行法の制度下では、おとり捜査で得られた証拠が必ずしも「無効」となるわけではありません。裁判所は「人権保障」と「公益」のバランスを考慮しながら、こうした証拠の有効性を判断します。一般には、証拠を得る過程で人権保障を著しく侵害し、かつ公共の利益に貢献していなければ、裁判所はその証拠を無効と判断します。台湾のこうしたやり方は、米国などで用いられる「毒樹の果実理論」(違法な捜査で得られた証拠に基づく証拠を排除すべきという理論)とは異なります。
脱税、模倣品売買でも
商業上では脱税、模造品、禁制品の売買でおとり捜査がよく見られます。例えば、税務職員が企業の脱税を疑っている場合、本来は存在しない売買契約書などの文書を求め、企業がそれを作成して提出したところを「文書偽造」で送検します。また、調査員や警察が模造品、禁制品を持っていない者に対し、他者から購入させてから調査員や警察に転売させるということもよくあります。こうした行為がおとり捜査となり得ます。
おとり捜査で得られた証拠が必ず「無効」となるわけではありませんので、企業は、調査権を持つ役人や、妙に積極的な顧客が非合法な文書や商品を要求してきた際には、一時の利益のために犯罪行為に及んでしまわないよう注意すべきでしょう。
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