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第87回 台湾におけるUIの著作権保護


ニュース 法律 作成日:2011年3月30日_記事番号:T00029081

産業時事の法律講座

第87回 台湾におけるUIの著作権保護

 コンピューターソフトウエアの高度な発達が、著作権に大きな衝撃を与えています。各国がソフトウエアを「言語の著作」であると認め始めた1980年代から現在までの30年間、ソフトウエア関連の創作に対する著作権の保護は、常にソフトウエア業界と法曹界で論争の焦点になってきました。過去にはマイクロコード(microcode)、グラフィックインターフェース(graphic interface)、テクニカルプロテクション手段(technical protection measures)などの議題が討論されてきましたが、現在、台湾の最高裁判所は、UI、いわゆるユーザーインターフェース(user interface)も著作権の保護対象となることを明確に示しています。

 今回はこれに関する訴訟をご紹介します。訴訟の被告は、1998年当時、告訴人である企業(以下「告訴人」)の開発要員でしたが、離職後、告訴人の所有するソフトウエア「Fantom CD」を改変し、「Alcohol 120%」という名称のソフトウエアとして、他者にインターネットで販売をさせました。02年末、告訴人が被告より当該ソフトウエアを購入、分析したところ、被告の行為は同意を得ない「複製行為」であることを発見したとして告訴を行いました。

 被告は、板橋地方裁判所より1年8カ月の有罪判決を受けましたが、減刑条例により10カ月に減刑されました。また、販売を行った企業の責任者も1年4カ月の有罪判決を受け、8カ月に減刑されたほか、企業が30万元の罰金刑を言い渡されました。 

 被告らはこれを不服とし控訴しましたが、知的財産裁判所は板橋地方裁判所の判断を支持し、ほぼ同様の刑事罰を与えました。しかし、販売企業については、告訴人との間で和解が成立したため、責任者は執行猶予の判断が下されました。被告は知的財産裁判所の判断に対しても不服とし、最高裁判所に上告しました。

UIも著作権保護の対象

 そして最高裁判所は昨年、告訴人の主張したUIも著作権保護の対象となるとして、以下のような判断を下しました:「いわゆるUIとは、ユーザーがコンピューターと対話することによって、コンピューターにタスクを実行させることを目的とした各種の設計である。UIには文字ベースのCUIのほか、アイコンを利用したいわゆるGUIがある。GUIではコンピューターの利用者はグラフィックスを利用することで、コンピューターとの対話を完成することができる。コンピューターソフトウエアの創造性は、プログラムの概念化(conceptualizing)に関する部分と、UIに関する部分に分けられるが、適切なUIの開発を行うため、設計者には非常に高度な創造性(creativity)、原始性(originality)、そして洞察力(insight)が求められる。したがって、このような文字ベースではないUIに対しても著作権の保護は及ぶと判断すべきである」。

「思想の表現方式」と認定

 さらに、本案件のプログラムはCDへの書き込みに関するプログラムであったことから、告訴人は「書き込みパラメーター」も著作権の保護を受けると主張しました。これに対して最高裁判所は:「CDライターにおけるパラメーター、つまり、『ソフトウエアがライターを操作するためのパラメーター設定表』は、単なる『表』ではなく、アクティブなソースコードである……このパラメーター設定表は、コンピューターに書きこみプログラムを実行させた後に、書き込みの安定性と正常な書き込みのためにソフトウエアと、パラメーター表の間で、『質問』と『回答』というやりとりが行われることから、UI同様、『ユーザがコンピューターと対話することによって、コンピュータにタスクを実行させることを目的とした各種の設計』であり、『思想の表現方式』であるため、著作権法による保護を受けるものである」と判断しました。

時代の需要を反映

 以上の見解からも分かるように、台湾の最高裁判所は、一般のUI画面、パラメーター表などに関しては著作権法の保護の対象としないという立場を取っています。その理由としては、それらの画面は簡単なもので、創意を表すには足りないものであるからです。また、パラメーターそのものも、「表現」上は著作権法が保護する創意には値しません。

 しかし、対話式UIとパラメータの動態的ソースコードについては、設計者に高度な創作性がなければ完成することができないため、著作としての価値を認めました。このような考え方は、著作権法の精神にのっとっているばかりでなく、時代の需要も反映しているため賞賛すべきものでしょう。

 

徐宏昇弁護士事務所

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