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第86回 知的財産権に関する求刑基準


ニュース 法律 作成日:2011年3月23日_記事番号:T00028929

産業時事の法律講座

第86回 知的財産権に関する求刑基準

 法務部は2010年3月から「智慧財産権刑事案件具体求刑参考標準(知的財産権に関する刑事事件の求刑基準)」を試行しています。この「求刑標準」は、知的財産権に関する犯罪行為を分析し、その項目ごとに設けた点数(ウエート)を計算し、被告の処罰の程度を決めるというものです。検察官はこの求刑標準を基に、裁判所に求刑するよう通達されています。

 知的財産権に関する犯罪の第二審専属管轄は、智慧財産法院(知的財産裁判所)となっています。また、高等法院(高等裁判所)検察署知的財産裁判所分署が、地方法院検察署(地検)で処理された知的財産権案件を審査、管理しています。したがって、知的財産裁判所に上訴される刑事案件は、量刑がほぼ一致しています。

 前述の求刑標準は最も軽い有期刑(2月)を基準とし、1点を10日として加減して被告に対する求刑期間を計算します。計算した結果が4月以下になった場合、被害者の同意を得られれば、検察官に起訴猶予など穏便な解決方法を申し立てます。

 現在公開されている求刑標準のうち、商標権の侵害に関する主な項目と点数は下記のとおりです(1点は10日に相当)。



もし被告が累犯(過去に有期刑以上の判決を受け、刑の執行後5年以内に再度罪を犯した)」で、前回の犯罪も知的財産権の侵害に関する案件ならば、上記の計算の結果を1.2〜1.5倍します。

 以上から分かるように、この求刑標準には多くの具体的要素が含まれています。そのため、どの裁判官が量刑を行っても、結果がほぼ一致するのです。もちろん裁判所は法律に基づいて判決を行えばよく、この求刑標準は何ら拘束力がありません。しかし、これまでの判決では、たとえ裁判官が検察官の求刑に同意しなくとも、検察官の求刑に加重減軽を行っただけの場合がほとんどです。

判断項目に疑問視も

 この求刑標準は、すべての項目が賛成に価するとはいえません。例えば、「生活のためにやむなく犯行に及んだ」ため、刑罰を軽減させるべきなのか考える余地があります。

 また台湾では他者を利用した犯罪がよくあります。利用された人が老人や社会的弱者、シングルマザー、重い疾病を患っている、または生活が困難な人の場合、主犯が捕まらなければ減刑されます。逆に、主犯が捕まった場合は刑が加重されます。言い換えれば、こうした「ルール」をよく知っていれば、警察との駆け引きを想定した犯罪計画が可能となるのです。

 

徐宏昇弁護士事務所

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