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第81回 音声商標


ニュース 法律 作成日:2011年1月12日_記事番号:T00027666

産業時事の法律講座

第81回 音声商標

 本コラム第79回で台湾の「立体商標」の審査の原則を紹介しましたが、今回は「音声商標」の審査の原則についてご紹介します。

 台湾の商標法では、組み合わされた音も商標登録の申請ができ、商標権を取得できると規定されています。経済部智慧財産局(知的財産局)の「審査基準」の説明には「いわゆる音声商標とは、消費者に商品またはサービスの出所を区別させる音のことを指します。例えば識別性のある簡単で短い広告音楽、旋律、人の会話、鐘の音、鈴、動物の鳴き声など」とあります。

 音声商標の最大の特徴は、聴覚を通じて消費者に関連商品の供給元を認識させることにあります。では、どのような音の組み合わせなら消費者に商品の供給元を区別させ、音声商標の登録を許可されるのかは、一般にあまり理解されていません。 「ダイキン(大金、Daikin)」エアコン製造の和泰興業股份有限公司(以下、和泰興業)は2007年9月、知的財産局に11音節から成る曲を「おもちゃ(力士人形)」を指定商品とする音声商標として登録申請しました。しかし知的財産局はこの曲が消費者に和泰興業の生産するおもちゃを認識させることはできない、つまり商標にあるべき「識別性」がないことを理由に申請を棄却しました。

 知的財産局の見解は「一般の消費者がこの曲を聞いても供給元を区別する音声として認識することは難しいため、識別性はない」というものでした。和泰興業は訴願、行政訴訟を提起しましたがいずれも棄却されたため、最高行政法院(最高行政裁判所)に上告しました。

 最高行政裁判所も10年10月末、和泰興業の上告を退ける判決を下しました。最高行政裁判所の判決理由は以下のようなものです。

指定商品の識別性

 和泰興業が商標登録を申請した音の組み合わせは、簡単で短い広告音楽ではなく、長い楽曲であり、一般の消費者が供給元を区別する音声として認識することは難しい。

 和泰興業はその音の組み合わせは商標の「後天的な識別性」を取得している、つまりもともと識別性がない商標だったが、長期間、大量に使用されることで消費者の心の中に当該企業のイメージが植え付けられたと主張しているが、和泰興業はこの曲を力士人形に対してではなく、エアコン製品の広告に使用しているので「後天的な識別性」が取得されているといえない。

 和泰興業は同日、別の広告音楽では音声商標の登録を許可されている。これは女性と子どもが「日本一番Daikin」と合唱するもので、2音節の音楽と歌詞1句で構成され、「一般の消費者がそれを聞くことで、広告音楽と認識できる」。当該案件と本案件の状況は異なり、これをもって本案件の登録を許可することの根拠にはできない──

歌詞部分は音声商標登録できず

 この案件から、台湾では簡単で短い広告音楽、またはその他の簡単で短い音声の組み合わせは「音声商標」として商標登録できると分かります。

 しかし筆者の所見によれば、音声商標を登録したとしても、それはあくまで「音声の組み合わせ」に関する部分の商標権でしかありません。例えば、前述の「日本一番Daikin」の「日本一番」という歌詞の部分についての商標権はどうにも取得できません。そうしておかないと、こうした自己を表現または描写する文言を他者が使用できなくなり、産業界に不利な影響を与えるからです。

徐宏昇弁護士事務所

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