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第79回 立体商標をめぐる判断


ニュース 法律 作成日:2010年12月8日_記事番号:T00027038

産業時事の法律講座

第79回 立体商標をめぐる判断

 
 ヤクルト本社が、特徴的な「くびれ」がある乳酸菌飲料のプラスチック容器の立体商標登録を求めた訴訟で、日本の知的財産高等裁判所は11月16日、ヤクルトの容器は「長年の使用、販売実績で、形状のみで商品識別力を獲得している」として、登録を認めなかった特許庁の審決を取り消す判決を下し、ヤクルトの訴えを認めました。

 これはコカコーラに続き、容器が立体商標としての登録を認められた日本では2件目の案件です。

 このような日本の現状とは対照的に、台湾は立体商標の認証を始めてからの月日は浅くなく、登録されている立体商標の数も少なくありません。特に、多くの著名な商品の容器が立体商標として登録を認められています。

 2010年5月、台湾の最高行政裁判所は、金莎巧克力(イタリアフェレロ社のロシェチョコレート。以下「ロシェ」)の包装に対して、「著名なロシェの包装は、その包装の外部から透かし見ることができるチョコレートも含め、一種の立体商標である」との判決を下しました。

 この案件は、弘大昌貿易公司(以下「弘大昌」)の商標登録申請に対し、知的財産局が「当該商標は既に登録がなされているロシェの包装の立体商標と類似しているため、登録を認めない」という判断をしたことに端を発します。弘大昌はこれに対し審判を請求し、「ロシェの包装は極めて普通の設計であるため、商標登録はできない」と主張しました。しかしこの主張は、知的財産局、経済部、知的財産裁判所のすべてに支持されなかったため、弘大昌は最終的に最高行政裁判所に上訴しました。

弘大昌の訴えを却下
 
 弘大昌は「ロシェの包装は以前、公平取引委員会、高等裁判所において、『識別性』がないと判断されている。つまりごく普通の設計なので、消費者がそれを特定メーカーの商標と認識できない」と主張しました。

 これに対し、最高行政裁判所は以下の理由で訴えを退けました。

1)ロシェの立体商標は、24個の金色の球形のチョコレートを長方形の箱に詰め、さらに包装上の設計を加えている。また、商標権者が提出した1993年から04年の販売実績と広告に関するデータから、その独特の設計を持ったチョコレートの箱は、「参加者(使用者)が長期の使用と取引を行ったことにより、既にその商品であると識別する標識となった」と判断する。

2)知的財産局が定めた「立体、顔色及声音商標審査基準(立体、色彩及び音声商標審査基準)」では、「商品または商品の包装は、商標として登録することはできない」と規定されているが、「もし、▽申請された立体商標が、機能的な特徴のある形状のみで構成されているのではなく、▽その他の特色ある形状を含んでおり、▽申請者が明らかに機能的な特色を持った部分の独占権の取得を意図しておらず、▽使用された商品の実用機能の観点から見て、その機能が主要なものでない場合、立体商標の全体観からすれば識別性を持つと判断される。また、たとえ立体商標の一部に機能性のある特徴があったとしても、登録は認められる」。

3)ロシェの包装の商標については、過去に民事裁判および行政院において、商標には不可欠な「識別性」を欠いているとの判断が下されたが、それらの案件はすべて弘大昌が公平取引法に違反しているかどうかを判断しているものであるため、本案とは異なるものである。

支持を得やすい海外ブランド
 
 この判決の理由から分かることは、以下の通りです。

1)台湾では早期に「立体商標」の概念の形成が行われた。知的財産局は既に審査基準を公表している。

2)台湾の知的財産裁判所と最高行政裁判所の立体商標に対する認定には一定の基準がない。海外のブランドは支持を受けやすい。

 筆者がこのような論評を行う理由は以下のとおりです。

1)判決理由中の、いわゆる広告費用がすべて24粒入りのロシェに使用されたかどうかは分からないにもかかわらず、裁判所は広告費用の金額の大きさから24粒入りの包装が消費者の熟知するところであるとの判断を下している。

2)知的財産局が本案の被告であるのにもかかわらず、知的財産裁判所と最高行政裁判所は被告の定めた基準に基づき、被告の認定の正確さを証明している。このような方法がまかり通るのであれば、なんのための行政訴訟なのか?

3)案件の内容が本案と同じであるかどうかはともかく、高等裁判所と行政院が、24粒入りの包装が識別性を持たないと認定しているのであるから、知的財産裁判所が「環境が時間と共に変化し、当該商標は既に識別性を持つに至った」と判断するのであれば、何がしかの理由を基に自らの認定を支えなければならない。

 知的財産裁判所と最高行政裁判所の判決理由がどちらも間違いであるというのであれば、それは「外国ブランドに対する迷信」という理由以外、合理的な解釈を見つけるとこは難しいでしょう。
 
徐宏昇弁護士事務所

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