先月、財政部より、個人の所得税を会社で負担した場合の取り扱いに関して、新たな通達が公布されました。会社負担の個人所得税については、昨年取り扱いが変更されたということもあり、皆さまの関心の高い項目かと思いますので、今回はこの通達の内容について取り上げてみたいと思います。なお、本稿の意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。
【今回のポイント】
財政部の通達により、一定の要件を満たす場合、会社が負担する個人所得税について、給与として計上できることが明文化されました。
1. 新通達の内容
営利事業者(会社)が外国籍従業員の個人所得税等を負担した場合の損金算入に関する規定について、財政部は、下記の通りの新通達を公表しました。当通達によると、以下の要件等を満たす場合、営利事業者が負担した外国籍従業員の税金について、当該営利事業者の給与手当として計上できることが明らかになりました。
●営利事業者と外国籍従業員の雇用契約書等において、給与に税金(個人所得税等)を含むことが明確になっている
●当該税金について、給与所得として所得税の源泉徴収がなされている
財政部通達(日本語訳)
2010年3月12日台財税字第09804119811号
http://www.mof.gov.tw/mp.asp?mp=1
一.本通達の公布日以降、営利事業者が外国籍従業員のために、税法の規定により当該外国籍従業員が納税義務者となる中華民国の所得税またはその他の税金を負担しており、招聘(しょうへい)契約または証明するに足りる書類において当該税金が当該従業員の役務提供の対価の一部として定められており、営利事業者が給与所得により所得税の源泉徴収を行い、「各種所得源泉徴収および源泉徴収免除票(原文:各類所得扣繳暨免扣繳憑単)」を作成した場合、当該税金を給与手当として計上することができる。
ただし、営利事業者が外国籍従業員のために負担した各種税金が、雇用契約または証明するに足りる書類において役務提供の対価の一部として定められていない場合、営利事業者の費用または損失に計上することはできない。この場合、当該金額は外国籍従業員が営利事業者から受けた贈与と見なされ、所得税法第14条第1項第10類に規定されているその他の所得に該当し、法により当該外国籍従業員の所得税が課税される。
二.本部の08年9月3日付台財税字第09704042610号通達の一の(三)における営利事業者が外国籍従業員のわが国の所得税を負担した場合の課税の規定については、本日より適用が中止される。
2. 新通達の影響
09年1月1日以降、会社負担の個人所得税について、会社帳簿において租税公課として処理した場合には、法人税と個人所得税の両方が課されることになっておりました(ご参考:当連載第2回)。この「ダブルパンチ」(法人税と個人所得税の二重課税)への対応として、従来より、「グロスアップして給与として処理する方法」が、法人税上において損金算入するための方策として考えられておりました。ここにおいて、今回の通達が公布されたことにより、通達記載の要件を満たす限りにおいて、この方法が明文化されることになりました。
従来、法人税の申告上、会社負担の個人所得税を損金不算入としていた会社におかれましては、今後、通達の要件を満たしていれば、給与手当として計上した上で法人税の計算上において損金算入することができますので、ご検討されることをお勧めいたします。
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