第17回に引き続き今回は台湾会計基準とIFRS(国際財務報告基準)の比較について案内させていただきます。シリーズ第2回は「収益」について取り上げます。
【今回のポイント】
IFRSでは原則主義(Principle-based)が採用されており、収益に関しては特に認識基準や表示(総額/純額)について留意が必要になると考えられます。
1.台湾会計基準とIFRSとの主な規定の比較
現在、収益に関して、台湾会計基準とIFRSは、概ね以下のとおり比較されます。ただし、2010年6月24日公表の収益に関する新基準の公開草案(Exposure Draft)の内容は、未確定の部分もあるため、下記には含めておりません。
2. 台湾企業への影響
収益に関して、台湾企業がIFRSを適用する際における主な影響について、以下の通り説明いたします。
●総額表示 vs 純額表示
IFRSの導入に当たって、企業は収益を総額または純額で表示するかについて検討する必要があります。売り手が主要な経営を担う者および販売委託関係における委託者である場合、その収益は総額をもって表示し、逆に、企業が販売委託関係における受託者である場合、収益は純額をもって表示することになります。
そのため、将来、IFRSの導入に従い、取引形態が変わらない状況下で、収益額の計上について従来の総額表示から純額表示へと変更が求められる可能性があります。これにより、損益計算書上の売上計上額が減少し、利害関係者の関心を引き寄せるほか、所在地税務機関の注意を引く可能性もあります。また、移転価格報告書上、表示の変動が必要となる可能性も考えられます。
●税務上の影響
税務上の影響も考えられます。IAS18号の規定によると、単一取引が複数の識別可能な項目から構成される、もしくは一連の取引が連鎖している場合は、取引の実質に応じて収益を認識すべきであるとされています。
例えば、物品の販売取引がアフターサービスを含むとき、取引は、物品販売とアフターサービスの2部分に区分するべきとなります。さらに、アフターサービスによる収益の額が個別に識別できるものであれば、当該収益を繰り延べ、サービス提供期間にわたって認識すべきであるとされています。
これを税務面から見れば、繰延収益は、サービス提供期間の課税所得となり、当該期間にわたって法人税を納付することになりますが、一括認識でない収益認識方法が税務機関から認められるかどうかは、現時点において確認されておりません。 収益認識の方法および結果は、損益計算書へ重要な影響を与え、販売契約の締結等に影響を及ぼす可能性もありますので、幅広い業種が関心を寄せるテーマとなると思います。また、IFRSでは、原則主義(Principle-based)が採用されており、収益の認識時点および認識原則についても、取引の実質を会計処理の基準とすることから、従来より経営者による判断が求められる局面が多くなると考えられます。
IFRSの導入を予定されている会社におかれましては、収益に関する影響について、当稿も参考のうえ、顧問会計事務所とも相談しながら検討されることをお勧めいたします。
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久保田裕
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