交際費は、会社を経営する上で販売促進等のために不可避的に発生する費目であると考えられ、交際費にかかわる税務処理については、会計事務所に質問がよくあります。そこで今回は、交際費に関する税務処理について取り上げたいと思います。なお、本稿の意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。
【今回のポイント】
台湾でも日本と同様、交際費の支出については税務上、損金算入限度額に関する制度が設けられています。台湾では、売上高・仕入高等の一定比率により、交際費の損金算入限度額が算定されます
なぜ交際費に損金算入限度があるか
会社が支出する交際費については、販売促進等事業のために支出し、その使途が明らかであれば、会計上は全額が費用として計上されます。しかし、交際費は場合によっては冗長に支出される可能性があります。そこで、税務上においては損金算入の限度額を定めることにより、冗費(無駄な費用)の節約が図られています。
損金算入限度額
台湾では交際費について、売上・仕入ごとに、以下のように算式が累進的に定められており、(Ⅰ)~(Ⅴ)の合計が、交際費の損金算入限度となります。このように、売上高、仕入高等の金額に応じて交際費の損金算入限度額も変わっていくこと、輸出売上については追加の枠(Ⅴ)が設けられていることが、台湾の制度の特徴といえます。
簡単な計算例
例えば、売上高・仕入高が以下の場合、交際費の損金算入限度額は、以下のとおり計算されます。
【例】売上高:3億台湾元(うち輸出売上1億元)、仕入高:2億元
(前提:会計士の税務監査あり、物品輸送収入・サービス業収入・輸出売上はなし)
【損金算入限度額】
[売上高:3億×0.3%+21万(累進差額)=111万]+[仕入高:2億×0.1%+9万(累進差額)=29万]+[輸出売上:1億×2%=200万]=340万元
よくある質問
交際費についてよくある質問および一般的な回答例として、以下を紹介させていただきます。なお、下記の回答例は、あくまでも一般論となりますので、詳細につきましては、顧問会計事務所等にご確認をお願いいたします。
1.日本では「1人当たり5,000円以下であれば交際費の対象から除かれる」といったような金額基準についての税法があるが、台湾でも同様の税法はあるか?
>台湾では税法上、金額基準に関する定めはありません。交際費の要件を満たす支出については、金額の大小にかかわらず支出交際費額に含められます。
2.交際費と会議費(全額について損金算入可)を区別するための明確な方法はあるか?
>台湾では、両者を区別するための明確な税法はありません。支出内容の実態をみて個別に検討されることになります。一般的に、会議費として計上するには、「会議の議事録がある」「会議の参加者、内容が明確である」等が要件として考えられています。最終的には、税務監査を執行する会計士および国税局の判断によります。
KPMG安侯建業聯合会計師事務所 久保田裕
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