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第41回 ECFA時代の到来(3) 〜台湾市場における中国製品との競合は?〜


ニュース その他分野 作成日:2010年9月14日_記事番号:T00025261

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第41回 ECFA時代の到来(3) 〜台湾市場における中国製品との競合は?〜

 
 両岸経済協力枠組み協議(ECFA)の締結により、台湾側も267品目の中国製品に対して関税率をゼロにまで引き下げることになる(2009年時点のHS8桁分類、現在の見込みでは11年元日から引き下げ開始)。それが台湾市場における日本製品と中国製品の競争激化をどの程度もたらすのかについて、今回は検討してみたい。

 台湾側のアーリーハーベスト対象品目267品目は、基本的に、台湾産業に与える影響が大きいものは排除されたと伝えられている。具体的には、農産物、台湾の中小企業主体の産業、競争劣位産業の製造品目(既製服、下着、セーター、水着、タオル、寝具、靴下、靴、バッグ類、家電、石材、陶磁器、漢方薬、農薬、環境用薬品、動物用薬品、木製品・竹製品)などが除外された。今回開放された267品目は、台湾が輸出競争力を持っており、中国側が台湾に対して今回開放したのと同様の産業分野の製品だと説明されている。
 
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日中の対台湾輸出競合度は低い
 
 では、この267品目に限って、日本・中国の対台湾輸出構造がどの程度似ているかを見ると、相関係数は0.34と低い(09年のHS8桁分類の貿易統計に基づき計算、1に近いほど競合度が高い)。一方、アーリーハーベストの対象外となった品目も含めて、すべての品目で日中の対台湾輸出構造の相関係数を計算すると0.66となった。つまり、今回台湾側が開放することを決定した品目は、総じていえば、日本製品とそれほど競合していないものが主体であり、今回の台湾側のアーリーハーベストによって、台湾市場における日本製品の地位が短期間のうちに大きく揺さぶられることはないだろう。 個別品目で見た場合はどうだろうか。日本の対台湾輸出額が大きく、かつ、中国の対台湾輸出競争力が強いアーリーハーベスト対象品目は限られている。

 日本の主要対台湾輸出品目10品目で見た場合、「その他の蓄電池」(HS85078000)、「オートバイ・自転車等の部分品(HS87149990)」は中国との競争激化について警戒する必要がある。しかしながら、その他の品目については、基本的に日中間で大きな輸出競争力の差があり、即座に中国製品が日本製品の脅威となる可能性は低そうだ。

さらなる自由化に注目
 
 ただし、ECFA発効後6カ月以内に、さらなる自由化に関する協議が開催され、できる限り早い時に合意を結ぶことが目標として定められている。その帰趨によっては、中国製品との競争激化や、自社グループ内の台湾現法と中国現法の分業体制の見直しを迫られる可能性もある。(1)中台ともに漸進的な開放を基本的な方針に掲げていること(2)WTO上は「実質的にすべての貿易」を10年以内に自由化することが原則とされているが、ECFAでは自由化の期限を区切ることを避けたことなどから判断して、こうした事態がすぐに訪れるわけではないだろうが、ECFA締結は台湾現法の新たな役割を改めて問うているといえよう。
 
みずほ総合研究所 アジア調査部主任研究員 伊藤信悟
 

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