ニュース その他分野 作成日:2011年1月11日_記事番号:T00027633
台湾経済 潮流を読む日本では、昨年の日中関係の悪化などを受けてリスク分散の観点から、中国以外の新興国市場の開拓により積極的に取り組むべきだと認識が高まっているようである。
2010年9月の尖閣諸島問題発生後に行われた国際協力銀行の調査によると、中国は日本企業にとって中期的に見て最も有望な事業展開先との認識は大幅には揺らいでいない。ただし、リスク分散の必要性ありとの回答率は46.9%と約半数に達している(「従来どおり積極的に事業に取り組む」との回答率は42.3%、「現時点では分からない」は10.8%)。
そうした中、中期的な有望事業展開先として近年日本企業の注目度が上昇しているのが、インド、インドネシアである。国際協力銀行の調査では、05年度調査時点で、インド、インドネシアを中期的に有望な事業展開先として選んだ企業は全体の36.0%、9.3%にとどまっていたが、10年度調査ではそれぞれ60.5%、20.7%に上昇している。人口の多さと近年の高成長を背景に、市場としての潜在的な魅力が高まっているためである。
政府も市場開拓を支援
台湾の馬英九政権も、新興国の中間所得層をターゲットした市場開拓を支援するために、「優質平価(“Most-Valued, Fair-Priced Product” 新興市場推動方案)」という3カ年計画を10年3月に発表している。そこで重点開拓市場として位置付けられているのが、中国、ベトナム、そしてインド、インドネシア(「双印」)である。
馬政権は、これらの国々の中間所得層向け製品に関する市場調査から、製品開発、量産技術、ブランディング、販売、人材育成に至るまで一気通貫で支援する体制を構築する構えを見せている。どの製品領域で台湾企業に潜在的な競争力があるのかについての詳細な研究も進められているもようだ(インド、インドネシア市場に関する初期段階の研究結果は図表1)。
台湾の新聞記事などを見ていても、台湾企業がインド、インドネシアに対する関心を高めている様子はうかがえる。ただし、現時点で、台湾企業の「双印」市場の開拓はそれほど進んではいない。インドネシアにとって台湾は第9位の輸入先、インドに至っては第30位の輸入先にすぎない(09年時点で、シェアはそれぞれ2.5%、0.9%)。直接投資についても、インドネシアでは第7位(1962~07年の累計認可額)、インドでは第38位(00~09年の累計実行額)にとどまっている。
投資企業も、現地市場開拓型のオートバイ産業を除くと、IT関連や紡織・靴産業など、OEM/ODM型・輸出目的の投資が中心を占めている。こうした現実を踏まえ、馬政権もBtoCよりもむしろ、BtoB市場を狙ったプロモーション活動を「双印」市場では展開する方針だ。
試される台湾企業の国際化能力
日本企業がインド、インドネシア市場を開拓する上で必要としているのは、次の2つである。一つは、販路とそれを基にした中間所得層向けの商品企画能力、もう一つは、現地中間所得層向けの製品をつくるために必要な安価で良質な部材の調達先である。
台湾企業の「双印」市場における販路がそれほど強くないことを考えると、これらの国々における日台アライアンスは、後者の部材調達面の方がどちらかといえば有望であろう。実際、日系メーカーが旧知の台湾部品メーカーにインドへの投資を勧めるケースなどが出てきているようだ。
しかし、台湾企業のインド、インドネシア投資は今後どの程度進展するのか、やや不安な面もある。台湾企業にとっても「双印」、とりわけインドは文化的・言語的差異が大きい。「インドカレー嫌い」が多く、台湾人派遣員が短期間で辞めてしまうケースが多いとの話も頻繁に耳にする。また、中国だけでも多くの投資機会があるのに、難度の高いインド、インドネシア事業にまで手を出す気にはならないとの声も聞かれる。それも現実的な選択肢の一つかもしれないが、非中国新興国の台頭という潮流は、台湾企業・台湾人の国際化能力を改めて試しているように思われる。
みずほ総合研究所 アジア調査部主任研究員 伊藤信悟
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