ニュース その他分野 作成日:2011年4月12日_記事番号:T00029288
台湾経済 潮流を読む3月11日の東日本大地震は甚大な人的・物的被害をもたらした。福島第一・第二原発問題などに起因する電力不足も日本の経済活動の足を引っ張る大きな要因となっている。こうした状況の中、台湾では、日本からの原料、中間財、資本財の調達難に対する懸念の声がいち早く上がり、日台間の経済関係の緊密さが改めて印象付けられることとなった。
どのような日本製品の調達がどの程度の期間にわたり難しくなる可能性があるのか。この点については、直接現場に立っておられる読者諸氏以上の情報は持ち得ない。本稿では、経済統計を基に、日本からの輸入が「完全に」途絶えた場合、台湾経済・産業にどの程度のインパクトが及ぶ可能性があるのかを推計し、日台間のサプライチェーンのつながりの緊密さを再確認してみたい。なお、試算に際しては、現在入手可能な最新かつ最も細かい分類の台湾の産業連関表(2006年、166の生産部門×554の中間投入財)を用いた。推計したシナリオは次の2つである。
「シナリオ1」は、日本製品の輸入が完全に途絶えてしまい、かつ、他国から代替品を輸入することも、他の中間投入財を代替品として使うこと(例えば、「コメを接着剤代わりに使う」など)も不可能、さらには、台湾製の中間投入財で代替することも不可能、というシナリオである。この場合、台湾の生産は74.9%も減少することになる(図表1)。
「シナリオ2」は、日本製品の輸入が完全に途絶えてしまい、かつ、他国から代替品を輸入することはできないし、他の中間投入財を代替品として使うこともできないが、台湾製の中間投入財で代替は可能というシナリオである。最後の条件が緩和されている分、「シナリオ1」よりも生産の落ち込みは小さくなるが、それでも生産は49.0%も減少する。
注)台湾のサービス貿易統計は、相手国・地域別に分けることができないため、ここでは日本からのサービス輸入は何ら影響を受けないと仮定している。
対策なければ甚大なダメージも
産業別に見た場合はどうだろうか。「シナリオ2」をベースとすると、最も台湾の生産に響くのが半導体の生産落ち込み(▲74.7%)であり、生産総額を4.2%PT落ち込ませる(図表2)。次いで生産全体へのインパクトが大きい順に、鉄鋼の初級製品、光電材料・ユニット、石油精製品、石油化学原料となっている(製造業のみ)。
上記2つの推計は、日本製品の代替品を探すことが極めて困難だとの想定に基づいている。中でも、「シナリオ1」は「日本製品は何物をもっても代え難い」という非常に強い仮定を置いたものである。むろん、実際には、日本製品の代替品を探すことは一定程度可能であるため、日本製品の輸入が完全停止したとしても、台湾経済がこれほどまでに大きな影響を受けることはない。ただし、何も手が打たれなければ、台湾経済に甚大なインパクトが及ぶ可能性があることを、これらの推計値は如実に物語っている。これほどまでに、台湾と日本は緊密な生産ネットワークでつながっているのである。それだけに、今回の大震災に際し、物心両面で多大な支援を提供してくださった台湾の方々への恩返しの意味でも、日本は早期復興を果たせねばならない。
みずほ総合研究所 アジア調査部主任研究員 伊藤信悟
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