ニュース その他分野 作成日:2011年9月13日_記事番号:T00032477
台湾経済 潮流を読む馬英九政権が発足し、3年4カ月が過ぎた。馬政権は、第4コーナーを回り、来年1月の総統選、立法委員選が近づく中、具体的な成果の積み上げを図るべく、ラストスパートをかけている。その一つの現れとして、このところ日本企業誘致や日台の産学連携促進などを目的としたミッションが台湾から日本に相次いで派遣されており、こうした動きが当面続く見込みだ。
馬政権は日本企業へ積極アピール
馬政権は、対中経済関係の緊密化を図ることで、外国企業の対台湾投資、台湾企業と外国企業のアライアンスが進み、台湾経済の活性化が図れると説いてきた。それを実証するためにも、馬政権は日本企業へのアピールを積極化している。今年7月には、外国企業の誘致を目的とした政府機関「全球招商聨合服務中心」の中に「日本小組」も設立されており、ここからも馬政権が日本を重点攻略先とみていることが分かる。
こうした動きを日本企業としてどのように捉えるべきなのだろうか。
より重要性を増す日台アライアンス
まず、アライアンス自体にどのような意義付けをするかが重要だろう。私は、日本企業にとって今後アライアンスはよりいっそう重要性を増すと考えている。その理由は次のとおりである。
第一に、少子高齢化に伴う人材供給の減少が必至であり、国内市場の伸び悩みが予想される中、外国企業の人材や販路の利用価値がさらに高まる。
第二に、電気自動車、エコシティ、スマートグリッドなど今後の発展が有望視される新興産業の多くは、ネットワーク性、システム性、インフラ性といった特徴をもつため、自社単独で市場開拓することは難しい。換言すれば、これらの産業では、市場開拓上、アライアンスの成否が鍵を握る。
第三に、先進国市場の長期低迷が予想される中、新興市場がさらに草刈場となる可能性が高く、十分な能力が備わってから進出したのでは時機を失してしまう恐れがある。アライアンスを通じ、自社の弱さを補う形で速やかに市場参入を果たす必要がある。
さらにいえば、アライアンスの可能性を考えることで、自社の経営戦略が洗練される。他社に任せられるものは何か、それでも残る他社を引き付けられるほどの自社の強みは何かについて、深く考えることにつながるからである。
また、近年、輸出・直接投資・海外生産委託がもたらす生産性向上効果が実証研究によって明らかにされているように(戸堂康之『日本経済の底力』中公新書、2011年など)、外国企業とのアライアンスは生産性向上への道筋を作るものである。
アライアンス相手としての台湾
では、アライアンスの相手としての台湾の魅力はどこにあるのか。台湾の魅力は、(1)日本との産業構造の類似性が高く、(2)技術水準も近く、(3)高成長が続く中国におけるコミュニケーション能力と台湾企業のプレゼンスの高さ(販路・生産規模等)、(4)日本の製品・サービスに対する理解度の高さ、(5)相互信頼関係の醸成に有利な良好な対日感情、これらの「組み合わせ」にある。
(1)(2)は台湾が日本のライバルともなるということと表裏一体ではあるが、共通の産業領域において知的資源を活用したアライアンスを組めるということを意味する。実際にも台湾企業や工業技術研究院の製品開発・応用研究能力を活用する事例を耳にするようになってきている。
また、(3)(4)が加わることで、中国企業では消化が容易ではないほどの高い技術レベルが要求される製品、中国企業にまだなじみのないビジネスモデルであっても、台湾企業の力を借りることで、中国市場に参入しやすくなる。さらに(5)の存在は、アライアンスの円滑な推進にとって有利な要素であることは論を待たない。
むろん、すべての台湾企業、台湾の産業が上述した特色を備えているわけではないし、アライアンスには意見調整等のコストもかかるが、他国と比べて、台湾には上述した特色を兼ね備えている企業・人材が相対的に多いという点はやはり特筆に値するのではないだろうか。
実際にも、最近、日本国内で実施されている日台アライアンス関連セミナーへの人の入りは以前よりも良いように思われる。
アライアンス検討で自社の強み再確認
読者の多くは既に日台アライアンスを身をもって実践されている方々であろうが、改めて台湾企業との新たなアライアンスの可能性を検討することで、自社の優位性の所在とその活用法、自社のもつネットワークの利用価値などについて、再確認をされるのもよいのではないだろうか。
みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟
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