ニュース その他分野 作成日:2012年2月14日_記事番号:T00035383
台湾経済 潮流を読む陳冲行政院長(首相に相当)率いる新内閣が2月6日に発足した。施政スローガンは、「安心内閣」、「富民経済」だ。
欧州債務問題の暗い影が台湾にも及んでおり、台湾経済は2四半期連続でマイナス成長を記録、リセッション入りした(前期比年率で2011年7~9月期は▲0.8%、10~12月期は▲1.0%)。こうした中、馬英九総統は、金融に明るい陳・行政院副院長を行政院長に昇格させ、経済閣僚経験者を引き続き登用することで、陳内閣に「安定を基礎とした上で、繁栄、経済成長の恩恵の共有、持続的成長」を実現させる方針だ。陳院長は早速「国際経済景気対応小組(小委員会)」を設置し、欧州債務問題への備えを強化することを明らかにしており、ここからも安定重視の姿勢がうかがわれる。
実感できる経済成長を
もう一つのスローガンが「富民経済」だ。1期目の馬政権に対する批判としてよく聞かれたのが、経済成長の実感が得られないというものだ。それを受けて、陳院長は、人々が金銭的にも精神的にも豊かさを感じられるような社会を築き上げることを目標として掲げた。
この「富民経済」の姿勢を体現するものとして「国民幸福指数」を作成し、13年からの公表を目指すことになった。これは、経済協力開発機構(OECD)が11年5月に発表した「より良い暮らし指標(Your Better Life Index)」をひな形として検討を重ね、台湾版の「幸せの尺度」を作ろうというものだ。OECDの「より良い暮らし指標」は11分類、合計20指標で構成されている(図表)。
ただし、国によって幸せの尺度は異なるとの理由で、11分類にはウェイト付けを行っていない。実際に、このOECDのホームページをみると、自由にウェイト付けを変え、OECD諸国のランキングの変化の様をみられるようになっている。この「より良い暮らし指標」と今後発表される予定の台湾版「国民幸福指数」とを見比べると、少なくとも馬政権が定義する「幸せの尺度」の特徴が明らかになるだろう。さらに、その指数の構成が台湾人の多くの支持を得られれば、台湾人の「幸せの尺度」とみなせよう。台湾版「国民幸福指数」の議論の行方は、台湾人理解という意味で十分興味深いが、マーケティングや人事制度などの参考となる議論や視点がその中から生まれてくるかもしれない。
次世代のために犠牲も
所得の高さ以外にも、幸福感を左右する要因が複数あることに疑いの余地はないし、多面的に国民の厚生の改善を図る姿勢は必要かつ重要だ。その意義を十分に認めた上で、注意すべきは、現在投票権をもつ市民だけでなく、「次世代」の幸福も意識した制度改革に努めるという点だろう。少子高齢化や次第に進む経済の成熟化を考えれば、次世代の幸福のために、現在の幸福や安心を多少犠牲にしなければならない局面は出てこよう。立法院で過半数の議席を持ち、再選圧力もない馬総統に、世代内格差のみならず世代間格差にも配慮した早期の制度改革を期待したい。
みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟
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