ニュース その他分野 作成日:2012年7月10日_記事番号:T00038149
台湾経済 潮流を読む近年、日本のラーメンチェーン店が台湾に次々と進出するなど、日本の外食産業の台湾に対する関心がこれまで以上に高まっているように映る。普段東京にいるがゆえに、筆者自身は最近そうした日系外食店を食べ歩き、楽しむことができていないが、知人の日本人に聞く限り、油の味を台湾風に変えるなどの調整は行われているものの、以前よりも本来の味に近い形で売り出しているケースが増えていると聞く。その背景には、日本を訪れる台湾人の数が2004年以降、一貫して100万人を超えており(台湾交通部観光局統計)、「本物の日本の味」を求める台湾の消費者が増えているという事情があるようだ。
日本国内でしのぎを削り、創り上げた味を多少なりとも調整するのは、心苦しく、悩ましいことだろうと察するに余りある。自分が本当においしいと思う味を変えなければならない上、異国の消費者の味覚に合わせてもなお残る自社の商品の売りが何かを探さなければならないからである。台湾では日系外食産業にとって既に激戦区となっているという意味での大変さは他国を上回るだろうが、味の調整の度合いが他国と比べて、あるいは、過去の台湾と比べて、小さくて済むところが、日本企業からみた現在の台湾の魅力かもしれない。
「台湾人の味覚に合わせて当然」
しかしその一方で、「本物の日本の味」に馴染み切れない台湾人もまだ少なくないようだ。例えば、先日会った中年の台湾人研究者は「台湾ではラーメンのスープは飲み干すものだ」と力説していた。「日本のラーメンはしょっぱい。台湾ではスープは飲み干せるぐらいに味を薄くしている。屋台の団子スープでもみんなそうでしょう。それは麺のスープだろうと同じことよ」と言うのである(それぞれの「。」のところに「あんたも知っているでしょうよ(你知道嗎!)」という言葉が挿入されるほどの強い語気であった)。台湾で商売する以上、(彼女の言うところの)「台湾人の味覚」に合わせるのが当たり前だというのが彼女の主張である。来日回数も多い研究者だっただけに、もう少し「本場の味」に理解があるかと思っていたのだが、そうでもなかったらしい。
先日(5月7日)の本紙でも紹介されていたが、台湾で独自に発展した「和風料理」の確立を目標の一つに掲げる「和風創意美食交流協会」の設立は、台湾人には台湾人好みの「和食」があり、その味に自負心があるということを如実に物語っている。こうした感情は、多くの外国料理を日本料理化してきた日本人なら理解できる。
アジアの他国念頭に味を模索
台湾を実験場とし、その上で中国などのアジアに進出するというモデルがある。このモデルを前提として台湾に進出するのであれば、「台湾口味」にこだわる消費者ともしっかり向き合い、日本で生み出した自慢の味を調整してでも残る自社のオリジナリティ、強み、魅力を模索することの意義は大きいように思われる。台湾以外では、さらに現地の味覚への適用が求められることになる可能性が高いからである。
あるいは、「日本人をうならせた名店が今度は台湾人のために一から腕を振るう」という発想もありえよう。そんな新たな味に多く出会えるならば、台湾に出張する楽しみがさらに増えそうだ。
みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟
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