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第52回 台湾経済からみた、米国経済の重要性再考


ニュース その他分野 作成日:2011年8月16日_記事番号:T00031906

台湾経済 潮流を読む

第52回 台湾経済からみた、米国経済の重要性再考

  8月2日、米国で2011年財政管理法が成立した。それにより、米国政府は政府債務残高の上限を少なくとも2兆1,000億米ドル引き上げることができるようになり、懸念されていたデフォルトが当面回避されることになった。ただし、それと引き換えに、米国政府は財政赤字削減を自らに課すことにもなった。財政赤字削減の規模は、今後10年間で合計2兆4,170億米ドルである。その結果、政府支出削減による強い下押し圧力が米国経済にかかるのは必至な情勢となった。

輸出統計より高い重要性

 財政部の貿易統計によると10年の台湾の輸出総額に占める対米輸出額のシェアは11.5%であり、00年時点の23.4%と比べると大きく低下している。10年の対中輸出額のシェア28.0%と比べても半分以下である。しかしながら、輸出統計が示すよりも、台湾経済からみた米国経済の重要度は高い。

 例えば、台湾の主要ITハードウエアメーカーの出荷先を完成品ベースでみてみると、米国を中心とする北米が全体の31.6%を占めている(図表1、中国は18.1%)。これが示唆するように、最終需要地としてみた場合、米国のプレゼンスは大きいのである。

 では、台湾のGDPのうち、一体どれだけが米国の国内最終需要によって生み出されたものと見なせるのだろうか。07年時点のデータにはなるが、台湾のGDPのうち8.9%が米国の国内最終需要に依存している計算となる(図表2)。中国の12.8%と比べると小さいが、それでも中国対比約7割の規模である。単純に輸出統計でみるよりも、台湾経済にとって米国経済は重要であることがこの推計から分かる。

 弊社では、上記の財政再建策に米国政府が着手することで、12年の米国の実質GDP成長率が約0.7%低下すると予測している。図表2をベースに計算すると、この下方修正により台湾のGDPは0.06%ほど下押しされることになる。

別ルートで影響の可能性も

 これだけで済むのであれば、台湾経済全体としてみた場合、受けるダメージは軽微なものになるだろう。しかし、米国経済の変調はその他のルートを通じて台湾経済に悪影響を及ぼす可能性もある。

 例えば、足元設備投資の下方修正を行う液晶パネルメーカーや半導体メーカーが出てきているが、米国経済の変調を契機に、台湾企業が投資姿勢をさらに保守化させる恐れもないとはいえない。また、株価の上値が重い状態が続き、個人消費が失速する可能性もある。欧州も政府債務問題を抱えている状況にあるだけに、景気の下押しリスクを今まで以上に警戒しておく必要があるだろう。

みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟

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