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第94回 「新式様専利」、類似の判断


ニュース 法律 作成日:2011年7月27日_記事番号:T00031494

産業時事の法律講座

第94回 「新式様専利」、類似の判断

 日本で意匠権と呼ばれている外観デザインに関する特許は、台湾では「新式様専利」と呼ばれます。毎年多くの新式様専利が認可されていますが、侵害訴訟にまで発展する案件は多くありません。智慧財産法院(知的財産裁判所)が2008年7月の発足から10年末までの間に下した特許関連の第一審判決は計167件、そのうち新式様専利に関する判決は15件、第二審判決では計162件の判決のうち12件にすぎません。

 案件そのものが少ないため、法解釈の蓄積がなされず、結果として新式様専利の侵害がどのように成立するかについては、とても分かりにくいものとなっています。

 06年、日本の本田技研工業が光陽工業(KYMCO)を相手取り、新式様専利訴訟を台北地方法院(裁判所)に起こしました。この訴訟で本田は、光陽が生産しているバイク「KIWI」が、本田が02年に取得したバイクに関する新様式専利第78489号を侵害していると主張し、光陽に対し「KIWI」の生産、販売禁止と、1,000万台湾元の損害賠償を請求しました。しかし、台北地方法院は、被告が高雄の会社であることを理由に06年11月30日、裁判を高雄に移管する裁定を下しました。その後、本田の抗告を受けた高等法院は07年2月5日、管轄権は台北地方法院にあると裁定したため、本案は再び台北に戻って裁かれることとなりました。

「進歩性がない」ため敗訴

 台北地方法院は2年近い時間をかけた審理の後、08年11月12日、本田の新式様は日本の意匠第911669号と極めて高い類似性を持っているため、特許認可要件の一つである「進歩性」がないとして原告の訴えを退ける判決を下しました。本田はこれを受けて智慧財産法院に控訴すると同時に、損害賠償額を3億元に引き上げました。

 しかし、智慧財産法院は10年2月25日、光陽のバイクと本田の新式様に「類似性はない」と判断、本田の訴えはまたしても退けられました。さらに当時、光陽は本田の新式様専利無効の訴えを起こしました。しかしこれについては、経済部智慧財産局が「進歩性が認められる」として新式様専利を維持しました。一方、本田は光陽のバイクに「類似性はない」と判定した智慧財産法院の判決を不服とし、最高法院に上告、「智慧財産法院が類似性を認めないことは特許法に違反している」と主張しました。しかし、最高法院は2011年6月30日に本田の訴えを退ける判決を下し、本案は確定しました。

争点は「主要部分」

 本案における争点は、一般消費者から見てバイクの構成部分のうち一体どこが「主要部分」なのかということに尽きます。
智慧財産法院の認定によると本案では、主要部分であるフロントカバー、および非主要部分であるヘッドライト、メーターパネル、フロントタイヤカバーなどのデザインには類似が見られるものの、その他の主要部分であるハンドル、フロントシリンダー、シート、リアカバーなどには類似性がないため、全体として類似していないと判断されました。つまり、被告の製品と原告の新式様の類似している部分の多くは主要部分ではないことから、全体としての類似性を否定したのです。

 本案で審理されたのは一般消費者向け商品であったため、消費者がその構造のうちどの部分を「主要部分」を判断しているかを分析し、全体的な比較を行うことで、正しくまた合理的な判断が可能となりました。しかし、もしこれが「専門的な製品」または「製品の部品」であった場合、本案と同様の基準によって類似性を判断することができるのかということについては、依然、問題が残るといえるでしょう。 

徐宏昇弁護士事務所

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