ニュース 法律 作成日:2011年10月12日_記事番号:T00033056
産業時事の法律講座数多くの特許を擁する鴻海科技集団(フォックスコン)は2006年12月、上達科技(サンタ・エレクトロニクス)の製品が鴻海の特許3件を侵害しているとして、上達がノートパソコン向け拡張カード規格「エクスプレス・カード」に使用するコネクターの製造、販売を停止するよう求める仮処分を士林地方法院(地裁)に申請しました。士林地方法院は申請を認め、07年2月に仮処分が執行されました。鴻海は続いて同年6月、上達の侵害排除、および上達とその董事が連帯して損害賠償2,800万台湾元を支払うことを求める民事訴訟を起こしました。
上達は仮処分を受け、抗告しました。台湾高等法院(高裁)は07年6月29日、本案に「重大な損害」、「差し迫った危険」のいずれも存在しないため、上達は製造をすぐさま禁止される必要はないとして、仮処分の裁定を取り消しました。鴻海はこれに対し抗告しましたが、最高法院(最高裁)が同年11月8日に棄却しました。
上達は仮処分の期間中、コネクターを製造、販売できなかったことによる損害賠償を請求するため、板橋地方法院に対して民事訴訟を起こしました。同時に、鴻海の特許3件はいずれも他者が公開している技術を単に組み合わせただけで「進歩性」がないとして、経済部智慧財産局(知的財産局)に対し無效審判を提起しました。
板橋地方法院は08年10月14日、上達の訴えに対し、証拠不十分を理由に棄却しました。上達はこれを不服とし、智慧財産局に対し上告しました。
特許取り消し、「進歩性がない」
智慧財産局は08年6月23日、実用新案1件に対する無効審判に不成立の審定を下しましたが、上達が経済部に訴願を行った結果、同部は09年2月2日、智慧財産局の審定を取り消しました。鴻海はこれに対して行政訴訟を提起しましたが、09年8月31日、智慧財産局より棄却されました。この結果、すべて智慧財産局が改めて判断を行うことになりました。
実用新案の2件目は、智慧財産局が09年3月6日、取り消しを審定しました。鴻海は訴願しましたが棄却され、後に行政訴訟を提起しました。しかし、智慧財産法院より09年12月24日に棄却されました。最高行政法院も10年11月25日、上告を棄却しました。
3件目の発明特許は、智慧財産局が09年4月1日に取り消しを審定しました。鴻海は訴願しましたが棄却され、後に提起した行政訴訟も10年9月16日に智慧財産法院により棄却されました。最高行政法院も11年6月16日に上告を棄却しました。
この2件が取り消された理由はともに、「進歩性がない」というものでした。
知財、鴻海に損害賠償判決
鴻海が上達を相手取り起こした民事訴訟は、士林地方法院が10年12月8日、鴻海の請求を退ける判決を出しました。3件の特許はいずれも進歩性がないため、無効という理由です。鴻海は智慧財産法院に対し控訴しました。
ただ、智慧財産法院はこれ以前の10年6月17日に上達の控訴について、鴻海が上達に316万台湾元の損害賠償を支払うよう命じる判決を出しています。鴻海はこの判決に対しても上告しましたが、最高法院は11年9月8日、「上達は本案の仮処分の再抗告の弁護士費用を請求することはできない。しかし、その他の313万元に関しては請求を認める」という判決を下しています。自分の首を絞める結果にも
さて、1件目の特許について、智慧財産局はその判断を変えることはなく、10年10月25日に無効審判は不成立と審定しました。しかし経済部は上達の訴願を受け、この特許の範囲第1項は明らかに進歩性を有していないという理由で、11年3月4日に智慧財産局の審定を取り消しました。鴻海は行政訴訟を起こしましたが、智慧財産法院に11年9月29日棄却されました。進歩性がないと判断されたためです。
鴻海が士林地方法院に対して起こした訴訟は、現在も智慧財産法院で審理中ですが、これら3件の特許がすべて取り消されたことから、結果は明らかでしょう。
筆者は5年にわたりこの案件にかかわってきました。知的財産権はイノベーションが必須だと強く思いました。智慧財産局の特許の審査がいい加減なことは改善すべき問題です。それ以上に、技術革新のない技術は知的財産権の保護を受けられないどころか、自分で自分の首を締める結果をもたらすと感じています。
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