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第96回 消保法「7日間のクーリングオフ期間」


ニュース 法律 作成日:2011年8月24日_記事番号:T00032086

産業時事の法律講座

第96回 消保法「7日間のクーリングオフ期間」

 グーグルは台北市政府の命令に従わず、消費者がスマートフォンでダウンロードしたアプリケーションソフトに「7日間のクーリングオフ(無条件契約解除)期間」を設けなかったため、罰金を科され、改善計画の提出を求められました。しかし双方はいまだ合意に至っていません。

 いわゆるクーリングオフ制度の7日間は、消費者保護法(以下「消保法」)に規定されている「通信販売で7日以内なら特段の理由なく商品を返品できる」期間です。この規定は、消費者が商品の購入を決定した時点で、商品を確認することができないため設けられました。商品だけでなく、サービスにも準用されます。

デジタル商品は通販か

 台北市政府の今回の決定は支持されていないようです。行政院消費者保護委員会(以下「消保会」)は2003年、「インターネットを利用した取引で、消費者が合理的な方法で適当な期間内にデジタル化された商品(以下「デジタル商品」)の内容を確認できる機会を与えられている場合、この取引は消保法の通信販売に属さない」という解釈令を示しています。このため消保会はデジタル商品の売買は消保法の通信販売でないという認識です。

 もしデジタル商品の定義が「インターネット上をデジタル化されたファイル形式で伝送され、ユーザーが鑑賞またはコンピューター上で使用する商品」ならば、クーリングオフ期間が7日でなく、もっと短いとする消保会の判断は理にかなっています。
一方「消費者が郵便、電子メール、ホームページ、テレビやラジオ広告などを通じて、商品の映像や文字(口頭)による説明のみを基に商品の購入を決定する」という通信販売の特性を考えた場合、デジタル商品も事前に商品内容を確認できないため、購入後に特段の理由なく返品できるべきともいえそうです。

サービスは返品可能か

 ただデジタル商品はファイル形式で存在しているため、消費者はデバイスを通してしか商品を認識できず、誰もファイル内容を確認することはない、つまり商品に実体がありません。デジタル商品は使用方法が単なる「閲覧」か「入力に応じた出力(利用)」で、商品というよりサービスに近いのが特徴です。

 消保法は、通信販売によるサービス提供に通信販売の規定を準用し、7日間のクーリングオフ期間を与えています。しかし台湾のことわざに「頭を洗ったのに剃らずにいれるか」とあるように、サービスは受ければ「返品」が難しく、多くの場合「停止」を求めることしかできません。したがって法律上は「準用」となっているクーリングオフ期間を実際にどのように準用するのかは、所轄官庁の解釈や、裁判所の判決を待たねば分かりません。

 デジタル商品は即時性がある点がサービスとの違いです。「閲覧型」のデジタル商品ならダウンロードした利用者がその一部または全部を閲覧すれば、商品の目的が達成されます。「使用型」はダウンロードすれば使用の有無にかかわらず、目的は達成されます。

 このような観点から、7日間のクーリングオフ期間は不公平といえそうです。特にスマートフォンのアプリがどれも小さく、廉価なことを考えればなおさらです。

 デジタル商品の「即時性」や、通販サービスに対するクーリングオフ期間が意味を持たないことを考えれば、合理的なクーリングオフ期間を設定するため、広く検討し協議する必要がありそうです。例えば、スマートフォン以外のデジタル商品なら試用システムを内蔵し、消費者に確認させ、「返品」を望むなら、プログラムが削除されるように設定してもよいでしょう。

徐宏昇弁護士事務所

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