ニュース 法律 作成日:2011年10月26日_記事番号:T00033348
産業時事の法律講座報道によると、基隆関税局は、輸入業者が日本から輸入したBurberry(バーバリー)の男性用下着を模倣品の疑いで差し押さえた後、Burberryの台湾代理店に下着の写真1枚を送り、模倣品かどうかの鑑定を依頼しました。その後、代理店の法務部長が「下着は模倣品」との鑑定意見を提出したため、関税局は輸入業者を検挙、第一審では有罪判決が下されました。しかし輸入業者が控訴した第二審では、裁判所は下着を日本に送り鑑定を行った結果、下着は模倣品ではないと判断、輸入業者に無罪の判決を下しました。
この判決を受け、輸入業者は代理店に対して200万台湾元の損害賠償を請求する訴えを起こしましたが、台北地方裁判所は「関税局は代理店に対して写真1枚のみで鑑定を依頼し、代理店はその写真の中のタグを根拠に模倣品かどうかの判断を下した。結果としては間違いだったが、代理店に過失があるとはいえない」とし、輸入業者の訴えを退けました。
「手抜き」が特徴
このような案件は台湾ではよく見られるものです。台湾政府は模倣品の取り締まりに全力を挙げていますが、製品の特性が多岐にわたり、その真偽を判断する方法も千差万別であるため、裁判所がそれらの真偽を判断する際には、真偽の判断に最も詳しいメーカー自身の鑑定意見が重要視されます。
しかし、最高裁判所は、多くの判決の中で「鑑定は裁判所が事実を判断するための根拠の一つでしかないため、裁判所の判断は鑑定人の意見だけを根拠にしたものであってはならない」としています。
長年模倣品の取り締まりにかかわり、裁判所に対して多くの鑑定意見を提出、採択されてきた筆者の経験によると、模倣品の特徴は「手抜き」です。つまり、模倣品は製造コストを抑え、利益を上げるために必ず何らかの瑕疵(かし)があります。そうでなければ模倣をする意味はありません。
本来、製造メーカーが検察や裁判所に提出する鑑定意見では、模倣品であることのほか、被告が「模倣品であることを知っていた」ことを証明しなければなりません。なぜならば、多くの場合、模倣品取り締まりの根拠となる商標法は、「故意」をその条件としているからです。もし模倣品と本物との差異があまりなかったり、鑑定者の意見が曖昧(あいまい)な場合、被告に「模倣品とは知らなかった」と主張され、無罪となってしまいます。
そのため、鑑定人が提出する鑑定意見には、裁判官が「一般人でも分かる」と判断できるような明確な差異を示さなければ、鑑定人の分析意見を根拠にした判断が下されることは期待できません。そもそも鑑定人は常にこのような厳格な判断を心掛けるべきでしょう。そうでなければ、鑑定人の権威は地に落ちます。
写真だけでなく現物確認を
本案では、関税局は写真1枚で鑑定依頼を行いました。このような鑑定依頼方法が、現在のところ関税局のスタンダードとなっています。関税局は鑑定を依頼するだけで、写真1枚以外、輸入業者の名称や、輸入先などの資料を一切提供しません。また鑑定意見が提出された後も、輸入業者の反応、どこの検察、警察機関で案件が処理されているのかなどの情報を得ることもできません。通常は、検察から裁判が開かれる旨の通知が来るまでは何の連絡もありません。
関税局のこのようなプロセスに対して、多くの商標権利者が改善を希望していますが、改善される望みは薄いでしょう。ですから、海外の商標権利者が関税局から鑑定依頼を受けた場合は、前述のような紛争に巻き込まれることを避けるため、写真1枚で鑑定を行うのではなく、鑑定人が直接現場に赴いて鑑定を行うことを要求するべきです。
そもそも、台湾の刑事訴訟法の規定によると、鑑定人が実物を見ずに行った鑑定意見には証拠能力がないため、判決の根拠とすることはできません。つまり、検察、裁判所が鑑定人の意見を必要とする場合、実物で鑑定を行った上での意見を求めなければならないのです。もし、事態が急を要し、写真による鑑定を行わなければならない場合、刑事訴訟法の規定に合わせ、鑑定人は鑑定意見を保留するべきでしょう。
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