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第102回 台湾製和麺?「Sanuki」商標取消事件


ニュース 法律 作成日:2011年11月23日_記事番号:T00033907

産業時事の法律講座

第102回 台湾製和麺?「Sanuki」商標取消事件

 台湾の大手食品メーカー、南僑化学工業公司(以下「南僑」)は、1999年に麺類への使用を指定した登録商標第844696号「SANUKI」を登録しました。しかし第三者が「大衆が誤信・誤認するおそれがある」ことを理由に「商標登録の取り消しの審判」を申請、経済部知的財産局の査定を受けた後に登録を取り消されました。南僑は行政訴訟を提起しましたが、2011年11月9日、知的財産裁判所に棄却されました。

 本案件の焦点は、▽登録商標「SANUKI」は日本の有名なうどんの産地を表しているため、消費者は南僑のうどんを日本製だと誤認しないか?▽南僑は既に10年にわたり「SANUKI」を使用してきたため、登録商標「SANUKI」は既に「南僑の商品」を表しているのではないか?──の2点にあります。

 知的財産裁判所は第1点について、▽「SANUKI」とは「讃岐」の「読み方」である▽讃岐とは四国、香川県の古い呼称である▽香川県は日本で有数のうどんの産地である▽したがって南僑がうどんに登録商標「SANUKI」を使用した場合、消費者が南僑のうどんを日本の香川県製だと誤認する──と判断しました。

 また第2点についても、▽南僑は長年にわたって当該登録商標を使用してきた▽しかし、証拠によると11年4月、南僑の副総裁は「南僑のさぬきうどんは100%台湾製で、日本とは全く関係ない」と表明したとメディアに報道された▽他のメディアも同様に「讃岐」という名称を日本の香川県のうどんと同一視している▽したがって、南僑が長年にわたって登録商標「SANUKI」を使用してきたものの、当該登録商標は「南僑の商品」を表しているとまでは言えない──と判断しました。

産地商標の保護は「読み方」にも

 しかし、確かに多くの台湾人は「讃岐」が日本の有名なうどんの産地であることを知っていますが、その大部分が「讃岐」の「読み方」が「SANUKI」であることは知らないはずです。したがって、この裁判所の判断の意味するところは、「産地商標の保護はその『読み方』にも及ぶ」、つまり「有名な産地の名称は特定の会社の登録商標として登録し、他者の使用を禁止することはできない。それがたとえ『読み方』である場合も同様」ということです。

 事実、本案件のように、台湾メーカーが海外の名称を商標として登録、10数年にわたって使用した後に商標登録を取り消されるという案件は、知的財産裁判所においては少なくありません。例えば、99年に登録された「歌萊美(Grammy)」という、楽器への使用を指定した商標は、10数年間使用された後、知的財産裁判所の判決により登録が取り消されました。裁判官はこの案件を審理する際に「なぜ『華人』がこのような外国語の商標を使用するのか理解できない」とまで言っています。

 この発言はあくまでも裁判官のイデオロギーの表れですが、案件そのものを見る限り、知的財産裁判所は台湾のメーカーが海外の有名な地名・名称を登録商標として登録をすることに対して、厳格な審査を行う傾向にあるようです。これはある意味、知的財産裁判所の台湾製品に対する自信を表しているのでしょう。台湾メーカーは商標設計の際にさらなる創意を求められています。

異なる意義与えれば活路

 もし皆さんが、あるメーカーの登録商標の外国の地名や名称が、消費者の誤認・誤信を招くおそれがあることを発見しても、商標登録の取り消しの審判を求めることはできません。商標法の規定では、商標登録の日から3カ月未満であれば、誰でも登録異議の申し立てを申請できますが、3カ月を超えてしまうと、法律上の利害関係のある人、つまり民事、刑事案件の被告または潜在被告(商標権利者の警告文を受け取ったメーカー)などの「利害関係者」のみが商標登録の取り消しの審判を申請することができます。

 また、もし商標権利者が商標登録後、集中して使用することで当該登録商標の知名度を上げ、登録された「名称」に元とは異なる意義を与えることができれば、商標登録時にあった「瑕疵(かし)」は消滅します。こうなってしまうと、たとえ利害関係者が商標登録の取り消しの審判を求めても商標が取り消されることはないでしょう。 

徐宏昇弁護士事務所

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