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第106回 施行間近の新商標法


ニュース 法律 作成日:2012年2月8日_記事番号:T00035261

産業時事の法律講座

第106回 施行間近の新商標法

 2011年5月31日に成立した改正商標法(新商標法)は総統から既に公布されており、今年5~6月にも施行される予定です。新商標法は現行の商標法の条文を大幅に改正し、新しい制度を多く取り入れているため各界の注目を集めています。

 最も注目されているのは、「動態商標(motion marks)」および「全像図(ホログラム)商標(hologram marks)」という新しい商標態様の採用です。「動態商標」とはOS(基本ソフト)の起動画面などのいわゆる「動画」を、「ホログラム商標」とはホログラムと呼ばれている立体画像を商標として保護の対象としています。

 経済部智慧財産局(知的財産局)が提出していた改正案の原案には「におい商標」および「触覚商標」が含まれていましたが、先進国でも具体的な審査制度が確立されていないことから、行政院はこれらの商標態様を法案から削除しました。しかし知財局は新商標法における商標の定義には「におい商標」および「触覚商標」が含まれると判断して行政命令により審査基準を制定し、申請を受け付けることとなりました。

 知的財産局では現在「動態商標」および「ホログラム」について申請を受け付けていますが、記録上の申請日(優先権日)は新商標法の施行日となります。「におい商標」および「触覚商標」については新商標法が施行された後に申請可能となります。

商標侵害も定義

 新商標法におけるもう一つの注目すべき点は「商標侵害」の定義です。

 現行の商標法における商法侵害は主に「他者の登録商標、または類似する商標を登録商品または類似する商品に用いる」ことを指しています。つまり、それらの「商標を商品の包装、広告、カタログなどのほか、インターネットやその他の電子媒体などに使用し、販売、販売を目的とした陳列、所持、輸入、売り込み、広告などを行う」と商標侵害になります。

 新商標法では第70条に商標侵害に関する新規定が追加されました。自己または他者が商標権を侵害する「虞(おそれ)がある」ことを「知りながら」、「商品またはサービスに関連(張り付け)される前のタグ、ラベル、包装容器、またはサービスに関連する物の製造、所持、陳列、販売、輸出、輸入」を行った場合、商標権の侵害と見なすというものです。

 こうした規定は全く新しいものですが、商標制度の変革というほどではありません。しかし、商標権利者がこれまで募らせてきた商標侵害者の協力者に対する恨みと、司法機関に対する不満を晴らす効果があります。

 この新規定は商標侵害者が模造品などを販売する以前の準備行為、つまり商標をタグ、ラベル、包装容器、またはサービスに関連する物に使用する行為にも解釈上適用されます。しかし、単にタグ、ラベル、包装容器などを製造する行為には適用されません。

 なぜならば、前述のような行為は、現行の商標法上の規定においても商標を「使用」する行為となるからです。現行法の規定によれば、行為が侵害を目的としたものであれば刑事犯罪となり、協力者であったとしても正犯または幇助(ほうじょ)犯となる可能性があります。また、それらの行為が過失によるものでも民事責任を負わなくてはなりません。

 つまり新商標法の規定はただ単に裁判所に対して「このような行為は罰さなければならない」と注意喚起しただけです。しかも今回追加された条文は内容が明確ではないため、条文適用により発生する問題は、条文によって解決される問題より多くなってしまうことが予想されます。

問題が増える懸念も

 例えば、前述の規定は商標をタグ、ラベル、包装容器に使用(例えば印刷)する行為に対してのみ適用され、まだ商標を印刷していないタグ、ラベル、包装容器を製造する行為には適用されないのか?といったことが将来必ず大きな問題となるでしょう。

 さらに、「虞があることを知っていた」ことはどのように証明すればよいのでしょう?この「知っていた」には、自己または他者の行為に「消費者に混淆(混交、こんこう)を与える虞がある」ことを知っていたことが含まれますが、この「虞がある」とは一体何を指しているのでしょう?

 このほかにも新商標法では、これまで問題とされてきた事項に対し、「意欲的に」解釈的な規定を追加し、問題の解決を図ろうとしています。しかし残念なことに、それらの規定は前述の新規定と同様「規定によって解決される問題より、それにより発生する問題の方が多くなってしまう」ようなものばかりです。新商標法が施行された後、知的財産裁判所で弁護士は今より多くの議論が必要になるでしょう。

徐宏昇弁護士事務所

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